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建物所有を目的とした土地賃貸借契約が一時使用でないと認定された事例

2007年05月31日 | 最高裁と判例集
木造建物所有目的の賃貸借契約が一時使用のものでないと認定された事例 (東京高裁平成8年11月13日判決、判例時報1589号50頁)

 (事実)
 地主・借地人(株式会社)間に、昭和62年12月、土地(登記簿上の項目は畑)を、期間2年、賃料月額金2万円の約の賃貸借契約が成立した。右土地賃貸借契約書には標題に、「土地一時使用賃貸借契約書」と記載されており、使用目的には、「仮設事務所用地(但しブロック基礎とする)」と記載されていた。

 右賃貸借契約はその後2回改定され、平成3年12月、賃料月額が金3万円に増額された。地主がAを代理人として借地人に土地の明渡を求めたところ、借地人はAの説明により本件土地賃貸借契約が一時使用のもので明渡義務があるものと信じ、右土地を平成6年5月末日に明渡す旨の約定書を作成した。そして、地主は借地人に対し、右約定に基づき、一時使用の土地賃貸借契約が終了したとして建物収去土地明渡および賃料相当損害金の支払を求めて本訴を提起した。

 これに対し、借地人は地主に対し、右明渡約定は要素の錯誤により無効であるとして借地権存在確認の反訴を提起した。

 原判決(横浜地裁平成8年4月11日判決)は、借地人会社の代表者個人が本件土地を昭和59年から賃借していたこと、借地人会社との契約後、右土地に木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建事務所兼倉庫を建てたが地主は異議を述べなかったことなどから、右土地賃貸借契約は一時使用の目的でされたことが明らかであるとはいえないとして借地人会社の要素の錯誤の主張を認め地主の本訴請求を棄却し、借地人会社の反訴請求を容認した。

 (争点)
 本件の争点は、本件土地の賃貸借契約が一時使用のものか否か。

 (判決要旨)
 東京高裁は、借地人会社が市の指定水道業者として金200万円を投じて本件建物を新築し、本店事務所兼資材置場として利用しており、契約当初から短期間に限って本件土地を借り受ける意思であったとは認められないこと、地主に早期に本件土地の返還を受けなければない特段の事情があったとは認められないこと、権利金の授受はなかったが、本件契約に当たり賃料が2倍に増額され、その後も更に増額されていることなどの事情を付加して、原判決と同様地主の控訴を棄却した。

 (短評)
 一時使用の賃貸借か否かは、単に借地期間の長短だけでなく、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造等を総合的に判断すべきであるとされている(最高裁昭和43年3月28日判決、判例除法518号50頁)。

 本判決は、土地賃貸借契約書記載の一時使用の文言にもかかわらず総合的に判断して一時使用の目的を否定したもので、他の事例の参考になるものである。   (1997.4)


 (弁護士 榎本 武光)

東京借地借家人新聞より


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