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更新料判決―「不合理な慣行」への警鐘 (朝日社説 7月26日)

2009年07月26日 | 契約更新と更新料
 地域ごとに複雑な慣行が残る不動産取引をめぐっても、消費者の意識は確実に高まっている。そんな流れを反映した司法の判断が出た。

 賃貸住宅の契約を更新するときには更新料がかかり、退去時には敷引(しきびき)として保証金から一定額を差し引かれる。そんな契約慣行について、京都地裁は「借り主に負担させる合理的な理由はなく無効だ」として、全額を借り主に返すよう家主に命じた。

 敷引特約を無効とする判決は、すでに各地で続いているが、首都圏や京都などでみられる更新料について、01年施行の消費者契約法に基づいて無効とした判決は初めてだ。

 この法律は「消費者の利益を一方的に害する契約条項は無効」と定めており、その趣旨に沿った判決といえる。賃料以外にも、さまざまな理由をつけた支払いを求められることの多い借り主にとっては朗報だ。

 訴えていたのは、3年あまり前に京都市内で家賃が月5万8千円のマンションに入居した男性だ。

 保証金が35万円で、そのうち30万円を敷引として負担する。2年ごとの更新時には賃料2カ月分の更新料を支払うという契約だった。その通りに11万6千円を払って更新したが、2カ月後に解約して引っ越した。

 裁判で男性側は「借り主には賃料の支払い義務しかない」と訴えた。

 家主側は、更新料には家賃の補充、家主が更新を拒絶する権利を放棄することへの対価といった性格があると反論した。敷引特約についても、同じような主張だった。

 判決は家主側の言い分をひとつずつ「合理的な理由はない」と退け、「敷引や更新料は高額で、借り主の負担が大きい」と男性側の主張を認めた。

 ふつうに住んでいる限り、契約書にあるからといって理屈の立たない支払いを求められることはない。そんなメッセージを感じさせる判決だ。一般の人の感覚にも合っているだろう。

 家主や仲介業者の中には「契約書に借り主もハンコをついた」と反発する人もいるに違いない。だが判決は、契約書にあるだけでは不十分で、貸主は賃料以外の負担についても具体的に説明し、借り主にきちんと理解させなければならない、と指摘した。

 更新料をめぐっては、これまで京都地裁の別の訴訟や大津、東京地裁などで借り主側が敗訴していた。「更新料は賃料の補充や前払いといえる」などという理由からだ。

 今回の判決によって、地裁レベルの判断が割れたことになる。上級審で早く統一した判断を示してほしい。

 「不合理な慣行」はもうやめる時期ではないか。この機会に、賃貸住宅の契約と支払いの仕組みをより分かりやすいものに整理してはどうだろう。


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