花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

だまされる人の心性

2023-12-31 12:05:00 | Book
 人にだまされるということは、だまそうとする相手を信じちゃうということです。身近な人にだまされるならまだしも、さして親しくもない人にだまされる場合、そこにはどんな心の隙があるのでしょうか。この点に関して、ひとつの例を紹介してみます。

 賃貸物件のオーナーが、賃借人のひとりと話をするうち、信用していろいろ自分のことを話すようになりました。ある時、ファッションに関するアドバイスを受けたので、そのお礼に高価なプレゼントをします。またある時、ちょとした頼み事をします。頼み事とは別の賃借人への言伝でした。すると、言伝の相手の態度に相当な立腹の様子。あらあらと思っていると、その賃借人は家賃を踏み倒して姿をくらましました。部屋に残されたのはガラクタばかり。

 さて、このオーナーは詐欺師まがいの賃借人をどうして信じてしまったのでしょうか。このことについて、とある意見を述べる人がいます。面白い見方なので引用してみます

 「身近な人間のことは警戒するのに、余所者には心を許してしまうひとは多い。自らの精神がからっぽであることをそばにいる人間に晒しているので、相手が自分をあるがまま容赦なく評価しているのを感じる。しかしひとは誰からも褒められないと、褒められたくてしかたがなくなるし、長所がないとあるように見せたくてしかたがなくなる。だから外部の人間の評価や優しさがいかに儚いものであっても当てにするようになる。未知の人間に貢献することで、自尊心の糧を得るのである。交際仲間との距離が近ければ近いほど、薄情になり、遠ければ遠いほど、親切になるのである。」

 この成程と思わせるコメント、実はかの文豪バルザックのものです。小説「ゴリオ爺さん」の中にあります。2023年から2024年にかけての越年本がこの「ゴリオ爺さん」なのですが、年末年始の休暇をバルザックの人間観察眼を楽しみながら過ごしたいと思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿