花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

唯見長江天際流

2024-01-22 20:47:00 | Weblog
 「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之(ゆ)くを送る」

 故人 西のかた黄鶴楼を辞し
 煙花 三月 揚州に下る
 孤帆の遠影 碧空に尽き
 唯だ見る 長江の天際に流るるを

 これは李白の有名な漢詩で、友人である孟浩然との別れを詠んだものです。遠い昔、漢文の授業で教わりました。後半の二行では、孟浩然を乗せた船の帆が遠ざかっていって、やがて空に溶け込んでしまい、友が見えなくなった河の流れが地平線に向かって流れていくを、ただただ眺めるばかりである、と寂しく哀しい情景が詠われています。

 授業ではそう習った記憶があります。けれども、ちょっと違う読み方が出来るのではないかと、最近思うようになりました。それは最後の一行についてです。河の流れは、友人の姿が消えてしまった状態を表しているのではなく、この流れの向こうにいる友と河を通じてつながっている状態を表しているのはないか、そのような気がしてきました。

 その意味では、黄鶴楼における別離は、心の河で結ばれ合う、新しい関係の始まりと捉えることが出来ます。齢を重ねるにつれ何かと別れが多くなりますが、もう一つの解釈に気持ちを寄せることで、慰められることも多くなるのではないかと思います。

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