花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

辻邦生から北杜夫への手紙

2023-11-13 19:14:00 | Book
(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)

 「孤独であれ!」 

 辻邦生と北杜夫は旧制高校以来長きにわたって手紙をやり取りしていた。「夜と霧の隅で」による芥川賞受賞や「どくとるマンボウ航海記」のヒットで作家としての地盤を築いた北杜夫へ、辻は滞在先のパリから手紙を送り、作家としてあるべき姿への考えを伝える。外国文学や政治や野球など、つまり自分の周辺的な部分について語り過ぎると、世の中が求めるイメージが広がり、それに合わせてポーズを作らなければならなくなる。そこには自分を見失う危険性が潜んでいる。「つねに内から、自分の本能でしか、ものはつくれない。」だから、小説家は「孤独であれ!」と。辻と北の親密な交際は死ぬまで続き、お互い日本文学史に残る作品を生み出していった。

辻邦生・北杜夫 往復書簡「若き日の友情」(新潮文庫)から

最新の画像もっと見る

コメントを投稿