shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Homage / Three For Brazil

2009-05-21 | Cover Songs
 誰もが知っている人気曲を片っ端からボッサ化する企画がここ数年目立ってきていることはこれまで何度も書いた通りだが、そんな玉石混交の中から “玉” を見つけ出してはブログで取り上げているので、 ひょっとすると“コイツ、ホンマにボサノヴァ好っきゃなぁ...” と思われているかもしれない。一歩間違うと “週刊ボッサ” みたいになりかねない当ブログだが、実を言うと私はそんなに熱心なボサノヴァ・ファンではない。というか、本格的なボサノヴァの良さはほとんど理解出来ていないというのが正直なところだ。アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトといった、いわゆる “本物のボサノヴァ” の良さがよく分からない(>_<) 本物の高級中華料理よりも王将やバーミヤンの日本人向け大衆中華料理の方が遙かに美味しく感じてしまうのと似ているかもしれない。
 そもそもボサノヴァの要諦はその抑制された歌い方にあり、メロディーの抑揚に乏しいことが多いので、知らない曲を特に男性ヴォーカルでブツブツ呟くように歌われるともう何が何だかサッパリわからなくなる。ヒドイ時なんか曲が違っても全部同じに聞こえてしまう。その点女性ヴォーカルはまだ幾分マシだが、それでも曲が魅力に乏しいとやはり辛い。つまり私が楽しめるボサノヴァの大半はポップスのヒット曲やジャズのスタンダード・ソングといった “メロディーの分かり易い曲” をボッサ化したものに限られるということだ。
 このスリー・フォー・ブラジルというグループとの出会いはもう7年ぐらい前のことになる。ちょうど富士通コンコード・ジャズ・フェスティバルに行かれたplincoさんが “スリー・フォー・ブラジルっていうグループがshiotch7さんの大好きな「ブルーライト・ヨコハマ」をボサノヴァで演っててんけど、それがもうめちゃくちゃ良かったで!” とコーフン気味に教えて下さった。あの「ブルーライト・ヨコハマ」をボサノヴァで??? あゆファンの私にとっては天地を揺るがすほどの大事件である。それは絶対に聴かねばならない。当時、導入してまだ数ヶ月しかたっていなかったパソコンを駆使して調べると、この「ハミッジ」(←クリックすると鳥肌モノのブルーライト・ヨコハマが試聴できます!)に入っていることが分かったので、すぐにCD屋に走り何とかゲットできた。
 彼らは紅一点の女性ヴォーカル(ポーランド人)、アコースティック・ギターを弾く男性ヴォーカル(ブラジル人)、そしてテナー・サックス(アメリカ人)という3人組ボッサ・ユニットである。全15曲中13曲が有名なボサノヴァ・スタンダード曲で、残りの2曲が何とスティングの名曲⑦「フラジャイル」とあゆの⑮「ブルーライト・ヨコハマ」なのだ。
 まずあゆの⑮を聴こう。このイントロは「男と女」だ... あれ?と思っていると1分21秒から満を持して例のメロディーが現れる。じらすだけじらした後だけに効果は抜群だ。スタン・ゲッツが憑依したかのような哀愁舞い散るテナー・サックスと品格滴り落ちるボッサ・ギターをバックに男性ヴォーカルと女性ヴォーカルが交互にリードを取り、最後の10秒で絶妙なハーモニーを聴かせて終わる... 完璧な3分20秒だ。スティングの⑦もやはり原曲のマイナー調メロディーを大切にしながら彼らのスタイルにアレンジされ、郷愁溢れる見事なボサノヴァに昇華されている。2曲とも、昨今流行りの脱力系ユルユル・ボッサではなく、バリバリの本格派ボッサである。もう参りましたと言うしかない。
 ボサノヴァ・スタンダード曲も実に分かり易いアレンジで心地良い演奏が目白押しだが、中でも洗練された⑥「イパネマの娘」、サバービアな⑧「マシュ・ケ・ナダ」、スタン・ゲッツ全開の⑪「黒いオルフェ」、スインギーな⑫「リカード・ボサノヴァ」、見事なハーモニーが堪能できる⑭「おいしい水」なんかは涙ちょちょぎれる名演だ。
 それもこれもすべてはplincoさんの一言から始まったのだ。持つべきものは音楽好きの友人である。plincoさん、素敵な盤を教えて下さって本当にありがとう!!!

スリー・フォー・ブラジル
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