shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Free As A Bird - Women's Tribute To John Lennon -

2009-05-01 | Beatles Tribute
 CDはある一定期間を過ぎると生産中止、つまり “廃盤” になってしまう。これは私のような “音楽ジャンキー” にとっては由々しき問題である。ジャズを例に挙げると「サキコロ」や「クール・ストラッティン」、「ワルツ・フォー・デビィ」といった人気盤はやれ紙ジャケだの、やれ24ビットリマスターだの、やれボーナス・トラック1曲追加だのと、装丁を次々と変えて再発されるが、そんなモノ、普通のジャズ・ファンならとっくに持っているハズで、ファンが本当に聴いてみたい盤はず~っと未CD化のままか、たとえ運良く発売されても一旦廃盤になるともう二度と日の目を見ることはない。これはジャズに限ったことではなく、邦楽ポップスでも洋楽ロックでもマニアックな盤すべてに当てはまる厳しい現実である。今の私はいわゆる “王道” からちょっと逸れた “面白カヴァー盤” がメイン・ターゲットなので、ネットなどでたまたまその盤の存在を知って「聴いてみたいなぁ...」と思ってもどこにも売ってないとか、ヒドい時には試聴すらできないという事態に直面してしまう。そーなると最後はヤフオク頼みということになるのだが、プレミアがついて高い価格設定になっていたり、あるいは同嗜好のライバルとの入札競争で落札価格が高騰したりする。だからず~っと探していた廃盤を無競争でアホみたいな値段で手に入れた時は喜びもひとしおだ。
 3年ほど前、ネット検索していて出くわしたこの「フリ-・アズ・ア・バード~ウイメンズ・トリビュート・トゥ・ジョン・レノン」もそんな1枚で、96年に発売された後すぐに廃盤になったのだろうと思うが元々そんなに売れてるハズもなく、中古盤市場に中々出てこずヤキモキしていた。こういう時はヤフオクで網を張って獲物がかかるのを我慢強く待つしかない。私は “お気に入り” に “ヤフオク” フォルダを作ってそこに狙っている盤のページを登録しておいて3日に一度は一斉検索するようにしているのだが、この盤はその甲斐あって格安で手に入れることが出来た。
 これは「アンソロジー」収録の「フリー・アズ・ア・バード」にインスパイアされた日本コロムビアのディレクターが企画発案したもので、 “ジョン・レノンの卓越したメロディをクールなクラブ系お洒落感覚で聴くとこうなる” というサウンド・イメージが原点にあるとのこと。しかも “ジョンのメロディを女性の視点から自由な発想で楽しく聴きたい”ということで、無名ながら個性的な4人の女性ヴォーカリスト達がそれぞれユニークな解釈でジョンの名曲をカヴァーしている。
 アイルランド出身のイギリス人ミッシェル・フリンが歌う①「フリー・アズ・ア・バード」、④「ジェラス・ガイ」、⑧「スターティング・オーヴァー」はどれも彼女の囁くような癒し系ヴォーカルを上手く活かしたリラクセイション溢れるサウンドがエエ感じ。ただし⑧のバックで終始流れる波の音や滅多やたらと挿入される犬やオットセイ(?)の鳴き声は全くもって余計だ。無意味なだけでなく折角の名唱を台無しにしてしまう。こういうのをオーバープロデュースというのだ。
 カナダ人のローラ・リンが歌う②「イマジン」、⑤「ウーマン」だが、②はアレンジをこねくり回しすぎで、ジョンの大名曲をおかしなレゲエ崩れのリズムに乗せてその違和感をシンセの多用で誤魔化そうとしているのがミエミエのトホホなトラックになっている。一方⑤は原曲のテンポを上げてビートを強調し、軽快なポップスに仕上がっており、こっちは歌もアレンジも申し分なし。間奏で挿入される鳥の鳴き声や赤ん坊の笑い声がなかったらもっと良かったのにね(>_<)
 日本人シンガー、ヨーコJKの③「リアル・ラヴ」、⑥「カム・トゥゲザー」はどちらも彼女の日本人離れしたソウルフルなグルーヴ感が全開で、彼女のフォーキーな声質と相まって、コクがあるのにキレもあるという実に素晴しいカヴァーになっている(^o^)丿
 パリ在住15年の日本人シンガー、ヴィ・ヴィの⑦「ジュリア」はこのアルバム中一番オリジナルに近いアレンジで、夢見心地に誘うような彼女の脱力系ヴォーカルがたまらない。
 ジョンやポールの書いた曲をカヴァーするのに中途半端な小細工は要らない。心を込めてストレートにカヴァーするか、原曲の良さを活かした独自のアレンジで勝負するかのどちらかだ。このCDは良い意味でも悪い意味でもそのことを露呈しているように思う。

リアル・ラヴ