shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Only Yesterday / Carpenters

2009-05-02 | Rock & Pops (70's)
 音楽ファンにとって “初めて買ったレコードの思い出” というのは決して忘れられるものではない。ましてやそれが “幸運な出会い” であり、その後の音楽人生を決定づけるようなものならなおさらだ。
 私の場合、最初にレコードを買ったのは中学に入ったばかりの頃で、ステレオ・セットはおろか、チューナーもカセット・デッキもない。あるのは電蓄と呼ばれるレコード・プレイヤー(LPをかける時は蓋すら閉められない小型プレイヤー)が1台と小さなAMラジオが1台あるきりだった。毎晩ラジオの深夜放送にかじりつき音楽リクエスト番組を聴き漁る日々だったが、ヒットチャートの9割以上を占める邦楽には何も感じるものがなかった。そんなある時、カーペンターズの「オンリー・イエスタデイ」がかかった。その瞬間、私は雷に打たれたようなショックを受けた。それはそれまで聴いたことのないような心ときめく音楽で、音の悪いラジオから聞こえてくるカレンの歌声に耳が吸いつき、形容しがたい衝動が身体中を駆け巡った。これこそ私が求めていた音楽だ、と確信した私は翌日学校の帰りに今は亡きあこや楽器という地元のレコード屋へ「オンリー・イエスタデイ」のシングル盤を買いに行った。今では考えられないことだが、何しろレコード屋に入るのも初めてならエサ箱に並んでいるレコードを選ぶのも初めてということですっかり舞い上がってしまい、中々目的の盤を見つけることができず、アブラ汗をかきながら店内をグルグル徘徊し、やっとのことで買うことができた。まぁ今振り返ってみればそれも良い思い出だ。
 私は急いで家に帰り早速そのシングル盤をプレイヤーにかけた。持っているレコードはこれ1枚きり... 私は何かに憑かれたように何度も何度も聴いた。わずか3分47秒のこの曲を何回聴いたかは分からない。とにかく曲が終わるたびに「もう1回聴きたい!」と思わせる不思議な魔力がこの曲にはあった。まずイントロのドラムのカウントに続いてカレンの低音の魅力全開のヴォーカルがスゥ~っと滑り込んでくるところ、ここでもうゾクゾクッときてしまう。それにしても何と分かりやすい英語だろう!中学に入りたての私ですら歌詞カードを見れば1語1語をハッキリと追うことができたし、知らない単語があっても何となく歌詞の言わんとしていることが伝わってきた。あれから30年以上が経ち、ジャズ、ロック、ポップスと様々な音楽ジャンルの楽曲をそれこそ何十万曲と聴いてきたが、カレン・カーペンターを超える女性ヴォーカリストに出会ったことはない。この歌声、この表現力、このポップ・フィーリング... 私にとってはカレンこそが常に最高峰であり、この先100年かかっても彼女以上の歌手が出現する可能性は皆無に等しい。そんなカレンの歌声を更に輝かせているのがリチャードの鉄壁アレンジだ。この曲でもストリングス、キーボード、ギター、サックスといったバックの楽器群が “これしかない!” と思える絶妙なバッキングでカレンの歌声を引き立てる。低音部を激しく埋めるベースやスペクター印のカスタネットも大活躍だ。更に一糸乱れぬリチャードのコーラス・ハーモニーがサウンドにリッチでゴージャスな厚みを持たせ、サビのクライマックスへと突入する。ラストのリフレインで聞こえるチャイムの音が “Tomorrow may be even brighter than today.” という歌詞にあるように明日という日への期待感を演出してフェイド・アウト... 完璧ではないか!これ以上何を言えるというのだろう?
 音楽バカ一代の人生において素晴らしい歌との出会いに勝るものはない。そういう意味でも私は本当に幸せ者だったと思うし、ラオウではないが「我が人生に一片の悔いなし!」だ。カレンが亡くなってもう25年以上経つが、改めて彼女に最大限の感謝を捧げたい。 RIP KAREN, YOU ARE AND WILL ALWAYS BE THE BEST!!!

Only Yesterday - The Carpenters