shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦 / 桑田佳祐

2009-05-04 | 昭和歌謡
 桑田佳祐師匠(私は同じ音楽フリークとしての同胞意識と敬意を込めて勝手に “師匠” 呼ばわりしているが、ここではあえて親しみを込めて “桑田” と敬称略します)の Act Against AIDS 企画の一環として昨年末に開催された「昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦」の模様を完全収録した2枚組DVDである。とにかく見て楽しく聴いても楽しい究極のエンターテイメントなのだが、紅白をパロッたおちゃらけ演出はご愛嬌として、3時間を超えるこのライブでGS、フォーク、演歌、J-Pops、歌謡曲といった様々なジャンルの約60曲をほとんど一人で歌いきる桑田佳祐という男の昭和歌謡に対する深い理解と愛情がビンビン伝わってくる。更にこれほど様々な楽曲を歌いこなしてしまう桑田のヴォーカリストとしての力量も凄い。いわゆる美声というのとは又違うハスキーな声ながら、その説得力溢れる歌声の魅力が如何なく発揮されており、思わず「上手いなぁ...」と唸ってしまう。又、桑田を支えるバックのコーラス嬢、ミュージシャン、ダンサーの面々の技量の素晴らしさも特筆モノで、これぞプロ!といえる素晴らしいステージが堪能できる。
 オープニングの2曲ぐらいは小手調べという感じで桑田のカラオケ状態だったものが、「コーヒー・ルンバ」、「上を向いて歩こう」と徐々に “クワタ・ワールド” へと引き込んでいく。MCで「一人一人の歌手の皆さんに私から愛情とリスペクトをね、諸々込めましてね、やらして頂きたいと思います」と語る桑田佳祐... 私はこの一言でますます彼が好きになった。日本を代表するスーパースターでありながら自らのルーツへの愛情と先達へのリスペクトを忘れないその姿勢が素晴らしい!!!
 前半のハイライトは “GS vs 恋と涙と太陽” コーナーだ。まずザ・タイガースの「君だけに愛を」のイントロのギターのチョーキング音に耳が吸いつき、“君だけぇにぃ~♪” と桑田が歌い始めるともうアドレナリンがドバーッと一気に溢れ出す。この曲を1発目に選んだ彼の慧眼に脱帽だ。一気に盛り上がったところでピンキラの「恋の季節」に突入、懐かしいメロディーを奏でるギターに哀愁舞い散るフルートが絡む必殺のイントロに涙ちょちょぎれる。今陽子になりきった桑田のヴォーカルも絶好調だし、黒のシルクハットでバック・ダンサーが踊る演出も最高だ(^o^)丿 続くザ・ジャガーズの「君に会いたい」、このあたりのGSは桑田の十八番なのだろう、曲を完全に自分のモノとして歌いこなしているのがよくわかる。それはブルコメのブルー・シャトウも同様で、桑田だけでなくバックのミュージシャン達もこれらの曲を歌い演奏するのが楽しくてたまらないという感じが画面からヒシヒシと伝わってくる。私の大好きなあゆのGS歌謡「太陽は泣いている」、大ウケするのが分かっている超有名曲「ブルーライト・ヨコハマ」ではなくあえてこの隠れ名曲を選んだセンスは凄いとしか言いようがない。リスペクトしてやまない美空ひばりのリズム歌謡「真っ赤な太陽」でも水を得た魚の如く熱唱する桑田佳祐... それは音楽が好きで好きでたまらない一人の男の姿であり、これぞ60'sといえる名曲の数々を歌いあげていく様は感動的だ。
 中盤ではまず「長崎は今日も雨だった」で白のスーツ姿でクールファイブのメンバー5人に扮した映像(個々のメンバーの特徴を見事に捉えた表情に大爆笑!)をバックに前川清が憑依したかのようなコブシの効いた歌声を披露したり、「他人の関係」で金井克子の歌い方をそっくり真似てみたりと、多才ぶりを見せつける桑田に脱帽だ。しかし何と言っても圧巻だったのは “ザ・ピーナッツ5連発”(≧▽≦)  特に「可愛い花」は有名なシングル・ヴァージョンではなくマニアックな “ボッサ・スウィング・ヴァージョン” というところがニクイなぁ... 「情熱の花」では2人のコーラス嬢にヴォーカルを任せ(←コレがまためちゃくちゃ上手いッ!)自分は宮川泰と化して指揮棒を振りまくる桑田の楽しそうなこと... そこにザ・ピーナッツ・フリークの真にあらまほしき姿を見る思いがする。「恋のフーガ」でお約束のティンパニが登場するのも嬉しいし、「恋のバカンス」でコーラス嬢と一緒になって歌い踊る姿はまるで “3人のピーナッツ” のようだ。歌い終わった時の桑田の何とも嬉しそうな表情が印象的だ。
 後半では山本リンダ「狙いうち」~西城秀樹「情熱の嵐」~ピンクレディー「渚のシンドバッド」~沢田研二「勝手にしやがれ」と、ノリノリのナンバーの連発で会場は大爆発寸前だ。それにしてもこんなに良い曲が立て続けに出てくると、あの時代がいかに凄かったかを改めて実感させられる。まさに名曲のアメアラレ、出るわ出るわのワンコソバ状態だ。前川陽子の「キューティー・ハニー」はアニメ主題歌のレベルを遥かに超えた私の超愛聴曲で、桑田は倖田來未ヴァージョンの今風アレンジで疾走し、間髪を入れずにラストの「GOLDFINGER’99」(郷ひろみ)へとなだれ込んでいく。“アーチーチー アーチー♪” で有名なこの曲、サザンお得意のラテン歌謡だ。ステージはもう桑田の独壇場で、会場全体がお祭り騒ぎのカーニバル状態に突入、昭和を彩った名曲たちのトリにふさわしい最高のエンディングだと思う。
 最後の8曲は “アンコール” という設定なのだが、そのアンコールに入る前に流れる桑田のメッセージ(←アップしたYouTube で曲が終わった後に見れます)が心を打つ。洋楽邦楽を問わず様々な音楽を聴いてきた桑田佳祐が発する言葉だからこその重みのある言葉だ。桑田師匠にはこれからもそのその類稀なる才能を発揮して色々と楽しませてほしいと思う。どこまでもついて行きまっせ~(^o^)丿

 goigoiさんに再開を教えていただいた「桑田佳祐の音楽寅さん」、今夜の放送は “永久保存版 必見! 桑田渾身の「空耳アビィロード」” です。先週の予告編でサワリを見ただけでも桑田師匠の才気が迸る究極の空耳スタジオライブの予感が... 桑田ファンはもちろん、ビートルズ・ファンも空耳ファンも必見ですぜ!

桑田佳祐≪DVD ひとり紅白≫GOLDFINGER'99 (1999)