shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

黒船 / サディスティック・ミカ・バンド

2009-05-24 | J-Rock/Pop
 サディスティック・ミカ・バンドを初めて耳にしたのはラジオだった... と言ってもちゃんとした音楽番組で聞いた、というのではない。 “来た、見た、買うたの喜多商店!”(日本橋にある電気屋さん)のラジオCMにミカ・バンドの③「タイムマシンにおねがい」が使われていたのだ。イントロのギター・リフに高橋幸宏のじわじわ加速していくようなドラムが絡み、ミカの“さぁ~♪”というヴォーカルが入ってくる瞬間のカッコ良さ!全身に電気が走るとはこのことだ。私はわずか30秒のラジオCMにこれほど魅せられたことはなかった。 “聞いたことのない声やけど一体誰が歌ってるんやろ?” “何ちゅー曲やろ?” と、この曲のことがめちゃくちゃ気になって何も手につかなくなった私は音楽好きな友達に訊いて回り、そのうちの一人がミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」やと教えてくれた。早速天王寺の三木楽器に直行し、この曲の入っている彼らの最高傑作アルバム「黒船」をゲットした。
 最初に針を落としたのはやはり「タイムマシン...」、大好きなこの曲をフル・ヴァージョンで聴ける幸せを何と表現しよう?バックの演奏もスリリングだったが、やはりこの曲は強烈な毒を撒き散らしながら聴く者の心をガッチリ掴むミカのヘタウマ・ヴォーカルのキッチュな魅力に尽きるだろう。彼女の素人っぽさ全開のぶっきらぼうな歌い方が躍動感溢れるこの曲にぴったりハマり、彼女にしか出せない絶妙なグルーヴを生み出しているのだ。あのユーミンがリスペクトしてやまないミカという女性、その圧倒的存在感はまさにザ・ワン・アンド・オンリーと言っていい。 又、歌詞もユニークで面白い。何と言っても “アンモナイトはお昼寝 ティラノザウルスお散歩 アハハァ~ン♪” である。 “ミンクをまとった娘が ボギーのソフトにいかれて デュッセンバーグを夢見る アハハァ~ン♪” なのである。何のこっちゃ分かったような分からんようなエキセントリックなフレーズだが、これをミカが歌うと不思議なマジックが生まれ、誰にも真似のできない素晴らしいロックンロールになるのだ。後半部のリフレイン怒涛の10連発の盛り上がりようはパンク・ロックもぶっ飛ぶ大迫力。そして演奏が最高潮に達したところでラストを “タイッ!” でスパッとぶった切ることによってこの曲のエンディングは完璧にキマッたのだ。とにかく私の知る洋楽邦楽すべてのガールズ・ロック曲の中でダントツ№1と信じるこの曲、ロック・ファンで万が一このオリジナル・ヴァージョンをまだ聴いたことがない人がいたら是非ともご一聴をオススメしたい。このワクワク・ドキドキ感はハンパではない。私と同様に彼女のヘタウマ・ヴォーカルにハマッた人にはベスト盤に入ってる「お花見ブギ」を大推薦!0分28秒、0分51秒、1分28秒で炸裂する彼女の “なんと!” で3メートルはぶっ飛ぶはずだ。お試しあれ(笑)
 ③のエンディングから間髪を入れずに始まる流れがたまらない④~⑥の「黒船」組曲(?)は鬼気迫るインスト・ナンバーで、高中のギターはまるでハイ・テンションのデイヴ・ギルモアのような凄まじさだ。
 遊び心溢れるチンドン屋サウンドが楽しい⑦「よろしくどうぞ」で始まるB面では、まさに “お祭り騒ぎぃ~♪” を体現したような疾走感溢れる和洋折衷ファンク・グルーヴに目も眩む⑧「どんたく」や、ファンキーなノリが圧巻の⑩「塀までひとっとび」なんかがインパクト大だが、私が大好きなのが⑪「颱風歌」。バンドが一体となって作り上げた分厚い音の壁が眼前に屹立し、聴く者を圧倒する。無駄な音は一つもない。74年の時点で日本人がこれほどのロックを作り上げていたという事実は、加藤和彦を始めとするメンバーたちがどれだけ時代の先端を行っていたかを雄弁にに物語っている。
 ビートルズの「ホワイト・アルバム」やポールの大名盤「バック・トゥ・ジ・エッグ」、ピンク・フロイドの「狂気」にも関わったクリス・トーマスが全面プロデュースしたこのアルバム、今聴いても十分刺激的な、時代を超えた不朽の名作だ。

この曲のヴォーカルはやっぱりミカじゃなきゃダメ!
高中、CHAR、ポンタらを従えて熱唱する97年のライブです↓
タイムマシンにおねがい
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