shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Mondo Bizarro / Ramones

2010-11-01 | Ramones
 ラモーンズは70年代から90年代までの約20年間に14枚のオリジナル・アルバムをリリースした。私がよく聴くのは “ポップなパンク・ロック” に拘った70年代から80年代初頭にかけてのアルバムだが、迷いが吹っ切れたかのように躍動感溢れる演奏を聴かせる90年代の「アシッド・イーターズ」、「モンド・ビザーロ」の2枚も大好きだ。特に1992年にリリースされたこの「モンド・ビザーロ」は彼らのアルバムの中でも「プレザント・ドリームズ」と並んで過小評価されているアルバムの最右翼に挙げられるのではないだろうか?
 アルバム・タイトルの「Mondo Bizarro」とは “狂った世界” という意味を表すイタリア語。長年在籍したサイアーを離れ、クリサリス・レーベルへの移籍第1弾であり、又、初代ベーシストであるディー・ディーが抜けて代わりに若い CJ が入って以降初のスタジオ・アルバムということもあって気合いも十分、エネルギーに満ち溢れたタイトなロックンロール・アルバムになっている。
 私がこのアルバムでダントツに好きなのがドアーズのカヴァー⑦「テイク・イット・アズ・イット・カムズ(邦題「チャンスはつかめ」)」だ。オリジナルの良さを活かしながらもラモーンズならではのハード&ラウドな味付けがピタリとハマり、強力なキラー・チューンに仕上がっている。特に要所要所を引き締めているグルーヴィーなオルガンと CJ の闊達なベース・ワークがめっちゃスリリングで、ジョーイのヴォーカルも鳥肌モノのカッコ良さだ。私的には「スパイダーマン」や「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」、「マイ・バック・ペイジズ」に匹敵する90年代ラモーンズ屈指のスーパーウルトラ大名演だと思うし、この1曲だけでもこのアルバムを買う価値があるのではないだろうか?
 ディー・ディーは脱退後も曲作りという形でバンドに貢献しており、このアルバムでもオリジナル・ナンバーでは最上と思える③「ポイズン・ハート」、⑤「ストレンクス・トゥ・エンデュア」、そして⑧「メイン・マン」の3曲を提供している。③はジョーイの情感豊かなヴォーカルが楽しめるミディアム・テンポのポップ・ロックで、 “パンク” のイメージで聴くと肩透かしを食うだろう。 CJ がヴォーカルを取る⑤はキャッチーなメロディーとハード・エッジなサウンドを見事に両立させた90年代ラモーンズらしいナンバーだが、ライヴではこのスタジオ・ヴァージョンを遥かに凌ぐドライヴ感溢れる演奏が楽しめるのが嬉しい。⑧はどことなく60年代GSの薫り漂う哀愁のメロディーに涙ちょちょぎれるナンバーでファンの間でもあまり話題には上らないが、私は “ラモーンズ隠れ名曲トップ3” に入れたいぐらいに気に入っている。
 ⑬「ツアリング」は約10年前のアルバム「プレザント・ドリームズ」のレコーディング時に書かれた曲で、曲調が「ロックンロール・ハイスクール」に似すぎていたためお蔵入りになっていたもの。もろ “ビーチ・ボーイズ風” なコーラスが笑えます(^o^)丿 彼らはアグレッシヴな “パンク” のイメージが強いが、こういう陽気なアメリカン・ロックを演らせたらピカイチだ。
 このCaptain Oi! レーベル再発盤のボートラ⑭「スパイダーマン」は元々ラスト・アルバム「アディオス・アミーゴス」の隠しトラックだったもので、以前「スパイダーマン」特集で取り上げたものとは別テイクの “1-2-3-4カウント無し” ヴァージョン。抜群の完成度を誇る本テイク(?)に比べると軽く流しているように聞こえるデモ・テイクっぽい演奏で、本テイクとの聴き比べもファンにとっては一興だろう。
①「センサーシット」はアメリカのアホバカ保護者団体 PMRC によるロックへの検閲(未成年に相応しくない、と認定した音楽に “Parental Advisory ステッカー” を貼り付けさせた...)を痛烈に皮肉った歌詞が痛快だ。ミック・ジャガーみたいなジョーイのヴォーカルは説得力抜群だし、ジョニーのモズライト・ギターの咆吼も脳髄をビンビン刺激する。エド・ステイシアムがプロデューサーとして戻ってきたせいか、ギター・サウンドの音採りが全盛期を彷彿とさせるラウドなのものになっているのが嬉しい。
 80年代っぽいサウンド・プロダクションが面白い⑥「イッツ・ゴナ・ビー・オールライト」、ラモーンズお得意の疾走系ロックンロール⑨「トゥモロウ・シー・ゴーズ・アウェイ」、ホリーズみたいな⑩「アイ・ウォウント・レット・イット・ハプン」なんかもメロディーにあと一工夫あれば名曲の仲間入りしたかもしれない佳作だと思う。
 80年代にやや迷走気味だった彼らが90年代に入って心機一転作り上げたこのアルバムは決して大名盤というワケではないが、ファンならずっと手元に置いて聴き続けたくなるような、愛すべき1枚だ。

The Ramones-Take it as it comes


Ramones - Touring


Ramones - Poison Heart


The Ramones -- Main Man

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4 コメント

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気持ち (やす)
2015-04-23 21:18:36
同感です★
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ですよねー (shiotch7)
2015-04-24 00:13:06
やすさん、共感していただけて嬉しいです。
こういう “自分だけの名盤” を見つけるのも楽しいですよね。
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楽しいです (やす)
2015-04-25 21:09:42
ラモーンズの見方がガラッと変わってきますもんね
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まさに... (shiotch7)
2015-04-26 23:02:15
ファンが目を細めて聴き入る隠れ名盤の典型ではないでしょうか。
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