shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

All Good Cretins Go To Heaven ! ~a tribute to the RAMONES~

2010-11-08 | Ramones
 ラモーンズのアルバムは中身の音楽はどれも素晴らしいのだが、ジャケットはイマイチ、というものが少なくない。“スポットライトの中に浮かび上がる黒い影” を描いたマンガチックな「プレザント・ドリームズ」なんて全然ロックンロールを感じさせないし、「ブレイン・ドレイン」や「アシッド・イーターズ」、「ウィーアー・アウタ・ヒア」なんかもジャケットを見ただけでパスしたくなるような代物だ。「アニマル・ボーイ」や「ハーフウェイ・トゥ・サニティ」に至ってはすぐに思い出せないぐらい影が薄い。文句なしにカッコイイ!と思えるのは「ラモーンズの激情」、「ロード・トゥ・ルーイン」、そして「トゥー・タフ・トゥ・ダイ」ぐらいだ。音楽パッケージとしてのジャケット・アートワークを重視している私にとってコレは結構大きな問題だ。
 ジャケット軽視(?)の傾向は彼らのトリビュート盤に関しても同じで、奈良美智のイラストがインパクト抜群の「電撃バップ!」や女性のヘソ出しジャケが魅力の「ボッサン・ラモーンズ」を除けば印象に残らない凡庸なものばかりだ。そんなお寒い状況の中、最近 eBay で偶然見つけて思わずジャケ買いしてしまったのがこの「オール・グッド・クリーティンズ・ゴー・トゥ・ヘヴン」だ。 A.J.B.Hangover という人(←二日酔い??? 変わった名前やね...)が描いたこのイラスト、遠近法を用いた抜群の構図センスといい、星条旗をあしらった絶妙な色使いといい、実に見事なアートワークだ。もうジャケットを見ただけで音楽が聞こえてきそうではないか!
 このタイトルは名曲「クリーティン・ホップ」の歌詞から取ったもので “愛すべきバカ者たちはみんな天国へ行く” とでも訳せばいいのか、ジョーイ、ディーディー、そしてジョニーとフロントメン3人が既に亡くなってしまったラモーンズに捧げるアルバムにはピッタリだ。尚、これも前回の「ブリッツクリーグ・オーヴァー・ユー」と同じくドイツ編集のコンピ盤で、全28トラック中何と19組までがドイツのバンドで占められている。そういえばベルリンにはラモーンズ・ミュージアムもあるし、ドイツ人ってラモーンズが大好きなんやね(^.^)
 このアルバムは最初の10曲ぐらいはオリジナルに忠実なアレンジの、いわゆるひとつの “完コピ” に近い演奏が多く、中盤以降は各バンドの個性を生かしたユニークなヴァージョンが目白押しだ。前半の “完コピ” 系では AC/DC みたいなリフがカッコイイ FreeZeeBee の①「アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング」、オリジナルを更に高速回転させた Gutbucket の②「サムバディ・プット・サムシング・イン・マイ・ドリンク」、ロックの初期衝動爆裂といった感じがたまらない The Commandos の④「コマンド」、ポップスをハードロックでビシッとキメるとこうなるという絶好のお手本のような Oklahoma Bomb Squad の⑤「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、メタリカの「エンター・サンドマン」みたいなサウンドがめっちゃカッコ良い Treekillaz の⑨「ガーデン・オブ・セレニティ」あたりが気に入っている。
 しかし何と言っても一番の聴きものは Wax.On Wax.Off というバンドによる⑦「ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド」だろう。これはタイトルが示す通りジョーイへの追悼ソングだが、曲調はラモーンズらしさ丸出しのアップテンポなもので、特に「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」を想わせる “バァー バァー ババァ~♪” フレーズの折り込み方には唸ってしまう。又、ポジティヴな歌詞からも彼らのジョーイへの深い愛情が伝わってきて涙ちょちょぎれる。辛気臭い追悼ソングはラモーンズには似合わない。
 The Popzillas の⑫「ロッカウェイ・ビーチ」は囁くような女性ヴォーカルにハード・エッジなギターが絡んでいくところがたまらないし、ヒューマン・リーグみたいな無機質エレクトロ・ポップ・サウンドで味付けされた Electric Hippie feat. Rebella Jane Doe の⑬「ブリッツクリーグ・バップ」も面白い。このアルバムのためにフィンランドで結成されたプロジェクト・バンド Snails Of Finland の⑯「スラッグ」は60'sポップ・バンド風アレンジが耳に心地良いし、Hens Hensen の⑰「アイ・ウォント・ユー・アラウンド」は “アンプラグド・ラモーンズ” っぽいフォーキーなサウンドが新鮮だ。ロクセットみたいなスウェーデンの男女2人組 Waver が歌う⑱「ダニー・セッズ」は女性ヴォーカルの吸引力がピカイチで中々味わい深いスロー・バラッドに仕上がっている。
 Ya*Hoo の⑲「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」は何とカントリー&ウエスタン・スタイルだ!パッと見は奇を衒ったような大胆なアレンジだが、以前取り上げたロカビリー・アレンジのラモーンズ・カヴァー盤でも明らかだったように、ロックンロールとカントリー / ロカビリーは異母兄弟みたいなモンなので意外なほど相性は良く、このヴァージョンも違和感なく聴けてしまう。
 Senzabenza という風邪薬みたいな名前のイタリアのバンドがカヴァーした⑳「ボンゾ・ゴーズ・トゥ・ビッツバーグ」は小型スポーツカーでワインディングを軽快に駆け抜けていくような爽快感溢れるロックンロール。こーゆーの、大好きです(^.^)  Joe Leila の(22)「サーフィン・バード」も初期ラモーンズが持っていた弾けるようなポップ感覚を見事に再現、1分17秒から炸裂する “ヘイホー・レッツゴー!” がたまらない。
 このアルバムは他のトリビュート盤ではちょっと聞けないようなユニークな選曲も魅力の一つで、中でも「ブレイン・ドレイン」収録の隠れ名曲 (27)「ゼロ・ゼロ・UFO」なんか実にマニアックな選曲だ。コレは Körperwerk というドイツのバンドの演奏だが、この曲のカヴァーなんて他にちょっと思い当たらない。ただ、 “嫁ブサイクでしたぁ~♪” の空耳で有名(?)な Alexisonfire の「Mailbox Arson」みたいなスピード・メタル・サウンドはちょっとしんどいけど...(>_<)
 ラモーンズってレコード・セールスやヒット・チャートの成績だけを見れば全然たいしたことはないのに、トリビュート・アルバムの数で言うと私の知る限りではビートルズに次ぐ多さで、ひょっとするとゼッペリンよりも多いかもしれない。既に解散してから15年近くが経ち、4人のメンバーのうち3人はこの世にいないというのに未だに世界中で愛され、リアルタイムで彼らを知らない新しいファンを次々と生み出している。これこそまさに “記録” よりも “記憶” に残るバンド、ラモーンズらしい現象と言えるだろう。

アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング


ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド


ロッカウェイ・ビーチ


senzabenza - bonzo goes to bitburg.wmv

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