shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ラモーンズの激情

2010-11-20 | Ramones
 この“ラモーンズ祭り” を始めてから何やかんやで2ヶ月近くが経った。最初は “祭り” ではなく「エンド・オブ・ザ・センチュリー」と2枚組ベストで終わらせるはずが、ミイラ取りがミイラにといういつものパターンに突入。結局10月から11月にかけてはほぼラモーンズ一色で、あまり紹介されることのないマイナー盤やトリビュート盤を中心に10枚を超えるアルバムを取り上げてきたのだが、やはり彼らの最高傑作といえるデビュー・アルバム「ラモーンズの激情」を取り上げないワケにはいかない。
 私のラモーンズ遍歴は、まずフィル・スペクターがプロデュースした 5th「エンド・オブ・ザ・センチュリー」からスタートし、次にベスト盤「ラモーンズ・アンソロジー」で全体像を把握、その後少年ナイフ経由で初期ラモーンズの魅力を再発見し、この 1st 「ラモーンズの激情」から3rd「ロケット・トゥ・ロシア」までの “イケイケ・ポップ・パンク初期三部作” を一気に購入、完全にラモーンズ中毒になったという次第。今は第2次マイブームの真っ最中だ。
 上記三部作の中で純粋に完成度の高さだけで言えば、パンクロックの攻撃性とアメリカン・ポップスの大衆性が高度な次元でバランスされた 3rd「ロケット・トゥ・ロシア」が一番だと思うが、初めて聴いた時の衝撃性という点では誰が何と言おうとロックの持つプリミティヴな初期衝動を真空パックして音溝に封じ込めたスリリングな展開に圧倒されるこの 1st アルバムだろう。
 このアルバムは全14曲でトータル時間が30分以下、つまり1曲平均約2分という短さにまず驚かされる。しかもその殆どが高速ダウンストローク主体のラウドなギターが轟きわたる疾走系ロックンロールなのだからたまらない(≧▽≦)  とにかくそのワイルドで粗削りなガレージ・サウンドは圧巻の一言で、進化の過程で複雑になりすぎたロックへのアンチテーゼとして、徹底的に贅肉を削ぎ落としたシンプルな曲構成が潔い。だからこのアルバムは曲単位でつまみ聴きするのではなく、1枚丸ごと一気聴きすることによって初めてその真価が分かるようになっている。そのハイ・テンションな演奏の波状攻撃はまるで北斗百烈拳のような凄まじさだ。
個々の曲に関して言うと、やはりアルバム1曲目を飾る①「ブリッツクリーグ・バップ」に尽きるだろう。当時流行っていたベイ・シティ・ローラーズの「サタディ・ナイト」の掛け声にインスパイアされてトミー・ラモーンが書いたというアンセム的なナンバーで、 “ヘイホー・レッツゴー” はローラーズの “S-A-T-U-R...”に勝るとも劣らないインパクトを内包している。それにしてもラモーンズとローラーズという一見水と油のような存在が実は見えない所で繋がっていたという事実が面白い。ボビー・フラー・フォーでヒットし、あのクラッシュもカヴァーしていた「アイ・フォート・ザ・ロー」を想わせるAメロも秀逸で、ラモーンズと言えばまずこの曲が頭に浮かぶファンも多いだろう。
 彼らが凡百のパンクロック・バンドと決定的に違う点は伝統的なアメリカン・ポップスへの深~い愛情が随所に感じられるところ。それを如実に表しているのがクリス・モンテス62年のヒット曲⑫「レッツ・ダンス」をカヴァーしていることで、原曲の持っていた “楽しさ” を殺さずに、誰でも口ずさめるキャッチーなロックンロールに仕上げているところが素晴らしい。メロディアスにロックするという、一見誰にでも出来そうで中々出来ないことをサラッとやってのけるラモーンズの音楽的な懐の深さに脱帽だ。
 このアルバムはアグレッシヴなサウンドやキャッチーなメロディーだけでなく、その独特な歌詞世界にも注目だ。曲目を見てまず気づくのが、やたらと「アイ・ウォナ...」(..したい)や「アイ・ドン・ウォナ...」(...したくない)で始まる曲が多いということ。④「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」、⑥「ナウ・アイ・ウォナ・スニッフ・サム・グルー」(←シンナー吸いたい、ってか?)、⑦「アイ・ドン・ウォナ・ゴー・ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント」(←「恐怖の地下室」っていう邦題、ホラー映画じゃあるまいし...)、⑬「アイ・ドン・ウォナ・ウォーク・アラウンド・ウィズ・ユー」(←「まっぴらさ」っていう邦題はもうちょっと何とかならんかったんか...)と、このアルバムだけでも4曲あるし、このアルバム以降も彼らには「アイ・ウォナ...」で始まるタイトルの曲がやたらと多い。まぁそれだけ彼らが自分の感情をストレートに歌にしているということなのだろう。
 それと、彼らの歌詞にはラジオで放送できそうにないくらいヤバいものが多い。上の⑥“シンナー吸いたい” は言うまでもなく、 “ガキをバットでぶん殴れ!” と繰り返す②「ビート・オン・ザ・ブラット」、客を殺してサツに追われる男娼の事を歌った⑪「53rd & 3rd」、“頼むから「ナチ」だけはやめてくれ!” というレコード会社社長の言葉をあざ笑うように “俺はナチ!” と連呼する⑭「トゥデイ・ユア・ラヴ・トゥモロウ・ザ・ワールド」など、ブラック・ユーモア連発だ。この “激ヤバ路線” の極めつけが80年代ラモーンズの最高傑作「サイコ・セラピー」の“誰かをぶっ殺してやる...”(←いくら何でもコレではラジオでかからんわ...)なのだろう。
 マッシュルーム・カットに革ジャン、ジーンズ、スニーカーでビシッとキメたモノクロ・ジャケットは、パッと見ただけで音楽が聞こえてきそうなカッコ良さだ。曲良し、演奏良し、ジャケット良しと三拍子揃ったこのアルバムは、ロックンロールを語る上で避けて通ることの出来ない金字塔的な1枚だと思う。

The Ramones - "Blitzkrieg Bop" (Live) Studio Hamburg


The Ramones - Let's Dance


Ramones I Don't Wanna Go Down To The Basement

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