shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Pleasant Dreams / Ramones

2010-11-04 | Ramones
 ラモーンズの過小評価アルバムとして前回の「モンド・ビザーロ」と同じくらい、いや、それ以上に無視されているのが、フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」に続いて1981年にリリースされたこの「プレザント・ドリームズ」である。彼らはセルフ・プロデュースか、或いは後にU2のプロデュースで名を上げることになるスティーヴ・リリィホワイトにプロデュースを任せるか(←実現してたらどんな音になってたかめっちゃ興味あるなぁ...)のどちらかにしたかったらしいが、彼らをコマーシャル路線に乗せてラジオで流れるようなヒット曲を生むことを望んでいたレコード会社は10CCのグレアム・グールドマンを起用した。
 ラモーンズというととにかく “ラウド & ファスト” なパンクロックというイメージが強いが、1st アルバムのあのパンキッシュな音作りを期待して聴くと思いっ切りコケてしまう(>_<) ここで聴けるのは絵に描いたような “パワー・ポップ” そのもので、実に洗練された耳当たりの良いサウンドに仕上がっている。そのせいか非常にジョーイ色の濃いアルバムになっており、逆に 1st アルバムの音を続けたかったジョニーはグールドマンのプロデュースが気に入らず、インタビューで ridiculous だとボロクソにけなしていたのも大いに頷ける。その結果、硬派なファンからは “軟弱” の烙印を押され、又一般の音楽ファンからは “パンク” への偏見で無視されるという、めっちゃ不憫なアルバムなのだ。
 しかし私はこのアルバムが大好き(^o^)丿 1st アルバムがスベッただの、パンクロックがコロンだだのといった能書きはとりあえず横に置いといて、先入観のない真っ白な心で聴けば実に良くできたアメリカン・ロックではないか!不発に終わったのは MTV の登場とそれに伴う第2期ブリティッシュ・インヴェイジョンやダンサブルなポップ・ソングの流行という時代の空気とたまたま合わなかっただけのこと。今の耳で聴けばバンドもグールドマンも当時の状況下で実に良い仕事をしたと思う。
 アルバム冒頭を飾る①「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」はそれまでの軽快な疾走系ロックンロールとは明らかに違うへヴィーなナンバーで、ミディアム・テンポで重心を下げたグルーヴィーな演奏が新鮮に耳に響く。「ロックンロールでナンバー・ワン」という邦題はもうちょと何とかならんかったんかと思うが(笑)、曲も演奏もめちゃくちゃカッコ良いキラー・チューンだ。
 ①と並んでこのアルバム中で傑出していると思えるのがジョーイの書いた③「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」だ。コレはジョーイの元恋人で彼を捨ててジョニーと結婚したリンダという女性の事を歌ったもので、保守派で極右思想のジョニーを KKK に例えて痛烈に皮肉ったタイトルがすべてを物語っている。ライヴで “KKKがオレから彼女を奪った” と連呼するジョーイの怨念(?)も凄いが、その横で何食わぬ顔で平然とギターを弾きまくるジョニーのプロ根性(←彼はファンが喜ぶことを何よりも優先した...)も見上げたモンだと思う。このアルバムにはもう1曲彼女の事を歌った⑦「シーズ・ア・センセイション」という曲が収められており、ジョーイには気の毒だがコレが又中々の名曲名演ときている。世の中ホンマに皮肉なものだ。
 このアルバムには他にも豊かなハーモニーでコーティングされたキャッチーなナンバーが多い。④「ドント・ゴー」や⑧「7-11」なんてハーマンズ・ハーミッツあたりが歌えばぴったりハマりそうなバブルガム・ミュージック(←もちろん良い意味です!)で、そのウキウキワクワクするような曲想はポップス・ファンなら絶対に気に入ると思うし、⑤「ユー・サウンド・ライク・ユーアー・シック」や⑩「カム・オン・ナウ」は彼らお得意の軽快なロックンロール。60'sの薫りが横溢する⑫「シッティング・イン・マイ・ルーム」のメロディー展開とそれに絡むコーラス・ハーモニーも絶品だ。
 ガチャガチャしたドラムのサウンドがユニークな②「オールズ・クワイエット・イン・ザ・イースタン・フロント」や、歌詞に “フィル・スペクター” や “10CC” といった固有名詞が次々に登場する⑥「イッツ・ノット・マイ・プレイス」も面白い。ボートラでは10年後に「モンド・ビザーロ」に収録されることになる⑬「ツアリング」の “1981年ヴァージョン” があるべきところに収まったという感じで強く自己主張しているし、未発表曲⑭「アイ・キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・マインド」も①を裏返しにしたような旋律が聴き応え十分だ。
 このアルバムは確かにラモーンズらしいアグレッシヴなパンチ力には欠けるかもしれないが、ますます磨きのかかったジョーイのヴォーカルが楽しめる極上のポップ・ロック・アルバムとして、 “パンクはちょっとどうも...” という堅気の音楽ファンにも安心してオススメできるポップな作品だ。

We Want The Airwaves - The Ramones


Ramones - The KKK Took My Baby Away (Music Video)


THE RAMONES - SHE'S A SENSATION


Ramones - Sitting In My Room

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