shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Acid Eaters / Ramones

2010-10-11 | Ramones
 ラモーンズというと “1-2-3-4のカウントで始まるラウド&ファストなパンク・ロック” というイメージが先行してしまい、その音楽性についてはあまり語られていないように思うのだが、彼らはセックス・ピストルズやストラングラーズ、ダムドのように偉大なる先人達を “オールド・ウエイヴ” として否定した身の程知らずの UK パンクとは激しく一線を画する正統派ロックンロール・バンドである。
 ラモーンズの音楽の中には彼らが敬愛する60年代のロック・ポップスの伝統が脈々と息づいており、それはパンキッシュな色合いが最も濃かった初期の3枚のアルバムを聴いても一聴瞭然だ。乱暴な言い方をすれば “ガレージ色の強いビーチ・ボーイズ” であり、表面的なサウンドはアグレッシヴだが、細かいアレンジやコーラス・ワークなんかにはパンクどころか私がこよなく愛する古き良き60年代の薫りが濃厚に漂っているのだ。
 それは彼らが初期にカヴァーしていた曲目を見ても明らかで、クリス・モンテスの「レッツ・ダンス」、ボビー・フリーマンの(というよりもビーチ・ボーイズがカヴァーしたヴァージョンが下敷きになっていると思われる...)「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、リヴィエラズの「カリフォルニア・サン」、トラッシュメンの「サーフィン・バード」など、どれもこれもパンク・ロックのイメージとは程遠いキャッチーなポップスやサーフィン・サウンドばかりであり、それらを換骨堕胎して “ラモーンズのロックンロール” として見事に再生しているのだから凄いとしか言いようがない。
 フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」以降、バンドはサウンド面でもマネージメント面でも暗中模索を繰り返しながら混迷期に入ってしまい、70年代に比べてオリジナル曲の名曲率が下がってしまったように思えるのだが、カヴァー曲には相変わらず名演が多い。ドアーズの「テイク・イット・アズ・イット・カムズ」なんか鳥肌モノのカッコ良さだし、トム・ウェイツの「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」もラモーンズのオリジナルと間違うぐらいにハマッており、カヴァーがオリジナルを超える瞬間を体験できる。そんな彼らが1993年にリリースしたオール・カヴァー・アルバムがこの「アシッド・イーターズ」だ。
 初期のカヴァーは60年代前半までのポップ曲ばかりだったが、ここでは60年代後半以降の本格的な “ロックの時代” のナンバーを中心に選ばれているのが一番の注目ポイントで、まずは何と言っても①「ジャーニー・トゥ・ザ・センター・オブ・ユア・マインド」のカッコ良さ、コレに尽きるだろう。テッド・ニュージエント率いるアンボイ・デュークスの隠れ名曲を1曲目に持ってきて、いきなりエンジン全開で一気呵成に突っ走るところがたまらない(^o^)丿
 ストーンズの③「アウト・オブ・タイム」ではミック・ジャガーばりの深みのあるヴォーカルを聴かせるジョーイが堪能できるし、ジェファーソン・エアプレインの⑤「サムバディ・トゥ・ラヴ」も聴きごたえ十分だ。しかし聴く前から一番興味があったのは我が愛聴曲⑩「ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい?)」で、CCR の原曲があまりにも素晴らしいので期待半分・不安半分で聴いたのだが、やはりラモーンズはラモーンズ(笑)、竹を割ったようなケレン味のない真っ向勝負のラモーンズ・スタイルでこの名曲を見事に料理しており、 “偉大なるワン・パターン” はここでも健在だった。
 ボブ・ディランの⑧「マイ・バック・ペイジズ」も素晴らしい。私は昔からディランの酔っ払いみたいなヴォーカルに馴染めず、レコードも持っていないせいもあって、この曲の存在を知ったのはキース・ジャレットによるカヴァーが最初だった。ジャズ・ピアニストがディランの曲を取り上げたという話題性もあってか(?)名演扱いされることが多いのだが、私的には別にどうってことのない凡演に思えたし、その後に聴いたバーズやホリーズによるカヴァーもイマイチだったこともあって、このアルバムを買った時も完全にノーマークだった。しかしさすがはラモーンズ! 曲の髄を見事に引き出した “ハード&スピーディー” なノリが圧巻で、血湧き肉躍るスリリングなヴァージョンになっている。又、ボートラとして追加されたビーチ・ボーイズの⑬「サーフィン・サファリ」もジャン&ディーンの「サーフ・シティ」共々実に楽しいカヴァーに仕上がっており、改めて彼らのルーツの一端を垣間見たような気がする。
 この「アシッド・イーターズ」はジャケもエグイし、解散間際の、しかもカヴァー・アルバムということであまり話題に上ることのない盤だが、ラモーンズ・ファンはもちろん、すべてのロック・ファンに自信を持ってオススメできる1枚なのだ。

Have you ever seen the rain The Ramones


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