shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Brats On The Beat ~ Ramones For Kids ~

2010-10-17 | Ramones
 ラモーンズの最高傑作と言われる 1st アルバム「ラモーンズの激情」で、彼らの代表曲「ブリッツクリーグ・バップ」に続くA面2曲目に「ビート・オン・ザ・ブラット」という曲が入っている。カタカナで書くと何のこっちゃ?なのだが、brat とは “行儀の悪い子供、ガキ” という意味で beat は “叩く” だから、このタイトルを日本語に訳すと “ガキをぶん殴れ” となる(←昔の邦題「チビに一発」にはワロタ...)。このアルバムには他にも “俺はナチ” とか “人殺しの男娼” とか、物凄い歌詞が満載なのだが、“ガキをバットでぶん殴れ、オーイェー、オーイェー♪” と歌うこの曲のインパクトは特に強烈だ。
 今日取り上げるアルバムはサブタイトルが「ラモーンズ・フォー・キッズ(子供のためのラモーンズ・カヴァー集)」で、タイトルは「ブラッツ・オン・ザ・ビート(ビートに乗った子供達)」と言う。「ビート・オン・ザ・ブラット」を一捻りしたワケだが、この遊び心溢れるユーモアのセンス、めっちゃ洒落てると思いません?私なんかこのタイトルだけで星3つあげたいぐらいだ(←ミシュランかよ!)。
 まぁそうは言いながらも実際に金を出して買うとなると話は別。いくらラモーンズが大好きといっても所詮は “子供のための” カヴァー集だし、ジャケットを見てもエエ歳したオッサンがスピーカーに対峙して聴くような代物とはとても思えない。一旦はパスしようかとも思ったが、話のネタにちょっとだけ試聴してみようと思い、USアマゾンのミュージック・サンプラーをクリックしてみると、原曲に忠実なアレンジのロックンロール・サウンドに乗って元気溌剌とした子供達のコーラスが聞こえてきた。音楽的にどうこう言う以前に何かめっちゃ新鮮な感じがしてすっかりこの盤が気に入った私は、迷うことなく “オーダー” をクリックしていた。
 届いたCDを聴いてまず感じたのはラモーンズ・ナンバーの楽曲としての素晴らしさである。ジョーイのあのくぐもったような深みのある歌声、ジョニーの鬼神の如きダウンストローク、そしてディー・ディー&トミー(or マーキー)のタテノリ・リズムが一体となって生まれるあの唯一無比のサウンドでなくても、そして子供達たちの可愛らしいコーラスが入っていても、少なくとも私にとっては十分楽しめるだけの吸引力をそれぞれの曲が備えているのだ。私はいかに彼らの曲が優れているかを改めて再認識させられた。
 バックの演奏はすべてガバ・ガバ・ヘイズというラモーンズ・コピー・バンド(←それにしても単純明快なバンド名やね!)が担当し、曲ごとに有名なパンクロック・バンドのシンガーをリード・ヴォーカルに迎え、子供たちがバック・コーラスをつけている。曲目とリード・ヴォーカリストは以下の通り;
  ①「ブリッツクリーグ・バップ」by ジム・リンドバーグ(ペニーワイズ)
  ②「ロックンロール・ハイスクール」by マット・スキバ(アルカライン・トリオ)
  ③「カリフォルニア・サン」by ブレット・アンダーソン(ザ・ドナス)
  ④「ロックンロール・レイディオ」by グレッグ・アットニト(バウンシング・ソウルズ)
  ⑤「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」by ニック・オリヴェリ(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)
  ⑥「ロッカウェイ・ビーチ」by ブラグ・ダリア(ドゥワーヴズ)
  ⑦「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・ハヴ・サムシング・トゥ・ドゥ」by エミリー・ウィン・ヒューズ(ゴー・ベティ・ゴー)
  ⑧「スパイダーマン」by アッシュ・ガフ(ガフ)
  ⑨「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」by スプーニー
  ⑩「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」by ジョシー・コットン
  ⑪「クリーティン・ホップ」by トニー・リフレックス(アズ・アンド・アドレッセンツ)
  ⑫「バップ・ティル・ユー・ドロップ」by ジャック・グリシャム(TSOL)
 私は90年代以降の洋楽は聴いてないので上記のシンガーもバンドも全く知らないのだが、そんな予備知識なんかなくても十分楽しめる内容だ。全12曲、わずか30分弱のこのアルバムは個々の曲について云々するよりも1枚丸ごとパーティー感覚で一気呵成に聴くのが正しい。あえて選ぶとすれば子供たちのコーラスで原曲の持っていたウキウキワクワク感が更にパワーアップされた⑩が一番気に入っているが、シンプルなロックンロールに子供たちのコーラスがぴったりハマった①②③⑤あたりも捨てがたいし、イントロの子供DJのキュートな声に思わず頬が緩む④も楽しさ一杯だ。ロック色の濃い⑦⑨⑫なんかもそれなりにカッコ良く仕上がっており、見た目以上に聴き応え十分だ。逆に期待していた⑧はアッシュ・ガフとかいうリード・ヴォーカリストがプロとは思えないぐらい下手くそで、折角の名曲が台無しだった。
 この盤はサブタイトルにあるように表面的には確かにキュートなコーラス満載の子供向けアルバムだが、演奏もしっかりしていて個々のリード・ヴォーカリストの個性も楽しめるし、どのトラックもパワー全開でロックしているので、 “ちょっと変わったラモーンズ・トリビュート・アルバム” として大人が聴いても結構楽しめる1枚だと思う。

シーナはパンクロッカー


Brett Anderson of The Donnas - California Sun


Matt Skiba (Alkaline trio)- rock n' roll High School

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