元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

無駄に歩く休日

2009-02-14 | 万年筆
時間の制約が必ずある日常の暮らしの中で、それはある程度の偶然がないと得られることがないのかもしれません。
たまたま駐車場の場所を間違えて(後でそれはひどい間違いであることが分かりました)、長い距離を歩くことになってしまって、特別な時間を得られたのはとても幸運でした。
石庭を見たことがないという、妻と息子を竜安寺に連れて行くために車で京都まで来て、妙心寺の南の端の駐車場に車を駐めました。
歩き出してすぐに分かりましたが、天気も良かったので引き返さずにそのまま歩いて、竜安寺まで行くことにしました。
とても広い妙心寺の境内は、たくさんの塔頭があり、それぞれが立派な塀を構えていて、それは小さな町並みのようになっていました。
時代劇のロケができるような、日本建築だけの趣のある参道をその風景を楽しみながら歩きました。
勝手に成長した息子は比較的文化的な渋いものに理解があり、この古い日本建築の間をさ迷う散歩を楽しんでいました。
妙心寺を抜けた、竜安寺前の小さな商店街も昭和の風情が残っていました。
その中のうどん屋さんに帰りに入りました。
テーブルが4つしかない、とても小さな古い作りの店ですが、腰板に竹が貼ってあり、なかなか趣のある店でした。
メニューの横に新聞の小さな切抜きがあって、作家井上靖さんが学生の頃から、結婚したばかりの頃までこの店によく来ていて、最近(平成2年)懐かしさから訪れたと書かれていました。
井上靖さんが懐かしがるのもよく分かる、時間の流れから取り残されたような、とても侘しい風情がありました。
祝日の昼間だというのに、お客は私たち3人だけでしたが、静かに落ち着いた、近所のレストランでは味わうことのできない、タイムスリップした時間を過ごしました。

2 コメント

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歩きながら (つきみそう)
2009-02-15 11:22:48
 考える、いろいろなことを話す、そういうことは、じっと座って同じことをするよりもはかなくて、けれどもその分貴重なものだと思います。歩いていたとき考えていたことが、建物の中に入るとそっくり消え去っていて愕然とさせられることがあります(ボケただけなのかも)。

 妻や、ある程度大きく育った我が子と歩く。これはとても貴重な時間だと思います。

 うどんは好きでないのですが、そのうどん屋さん、訪ねてみたくなりました。
うどん屋さん (penandmessage.)
2009-02-17 19:48:04
つきみそう様
ありがとうございます。
うどん以外のメニュー(そば、ラーメン、どんぶり)もありますのでぜひ行ってみてください。
考えたことは本当に儚いと思います。それを少しでも発展させて、自分の考えが成長できるようにしたいと最近は小まめにノートに書くようにしています。