元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

利休にたずねよ

2009-02-17 | 仕事について
本屋さんでタイトルに利休と書いてある本を見つけると必ず買ってしまいます。
この本もそんな1冊でした。
お手前や道具の描写が詳しく、今までの利休をテーマにした小説にはなかった,
利休を侘茶へ導いた理由についての大胆な設定もあって楽しむことができました。
厚い単行本だったので、毎日少しずつ大切に読みました。
お客様をもてなすためという目的の達成のために全ての行為が向いている茶道や、自分が見出した美しさ、精神性を数々の道具で形にした千利休は、店で働く者にとってその物の考え方が大変参考になると思っていました。
自分が見出した境地に姿形を与えるというのは、悟りの境地を表現した禅芸術ですでにされていたと思いますし、枯山水の庭などもそのひとつだと解釈しています。芸術そのものがそういうものかもしれませんが、千利休のすごいところは単一の表現手段だけではなく、空間、道具、作法などすべてを整えたところにあると思っています。
自分自身で作品を作らず(一部の茶杓、花入れは自作したようですが)その美意識を意匠にし、超一流の職人に作らせることで、頭の中にある美や精神に形を与えるという利休の仕事は現在にも通用する考え方で、企業の理念、目標などを顧客や取引先に分かりやすい形で表したのブランディングにも当てはまります。
各企業のブランディングを感じて、顧客たちは好みや考え方によって選択すると考えれば、商品を売り買いする前のとても大切な、自分と合う相手かどうかという判断をする目安にするのが、ロゴ、パッケージ、内装などのデザインなどの表面をまとったブランディングです。
逆にイメージを訴える側は、それら全てに経営理念などの考え方、美意識を込めて、言い方は悪いですが全ての辻褄を合わせることが、情報を訴えられる側への配慮であり、顧客を裏切らないということにつながります。
400年以上前の人がそのような考え方で茶の湯を行っていて、その考え方がいまだに参考になるということは、人というのは精神的な本質的な部分ではそれほど変わらないということが分かります。
分からない将来のことを考えるよりも、ヒントは鋭い感覚を持っていた先人たちが教えてくれるのかもしれません。