元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

箱根の坂

2021-04-12 | 実生活

年が明けてからずっと本を読んでいるように思います。一人の時間があれば、わずかな時間でも本を開いていた。
今までは書店でブラブラと本のタイトルを眺めて、こういう本を読んだ方がいいだろうという選び方をしていて、そういう本は読んでいてもすぐに眠くなってしまった。
でも司馬遼太郎の書く様々な男の生き方を読んでいても、全く眠くならず、寝る前にも読むけれどむしろ目がさえる。

どの小説に書かれている人それぞれに魅力があるけれど、北条早雲は特に共感できた。
最初の戦国武将ということになっていて、その名前からも時代の風雲児のようにイメージしてしまうけれど、その真逆な人物像を読みました。

早雲の縁のある女性が嫁ぎ先の駿河今川家で、夫に戦死されて幼子を抱えて不安な状況にあることを知って、この母子を守るために保証された身分を捨てて、わずかな仲間とともに駿河に乗り込んでいく。
自分のキャリアのためではなく、旅の者といういつ去っても仕方ない気持ちで駿河の国、今川家を安定させて、諸説あるけれど50代で初めて自分の国を持って、領民や駿河の国を守るために領土を東に広げて、伊豆や相模を戦で勝ち取っていく。

戦をすれば滅法強かったし、領国は租税を安くして繁栄した。自分は誰のためにこの地位にあって、誰のために政治をしているのかということを理解していた。様々な自己の欲が渦巻く戦国の世において、そういう人は少なかったのではないかと思います。

大げさだと思われるかもしれないけれど、商売も戦国の世と変わらないのではないかと思います。そして会社というのはひとつの国なのかもしれない。

誰でもその気になれば店を持ったり会社を起こしたりできて、力のあるものが生き残り、存在価値をお客様に認められなければ滅びていく。
会社がダメになれば、自分たちの生活が立ち行かなくなり、生きていけなくなる。

司馬遼太郎の小説に様々なタイプの領主が出てきて、それぞれの生き方や思考が分析されています。
もちろん作者の創作の部分も大いにあるだろうけれど、実際の資料を参考にして書かれていると言われていて、近い人物像だったと思います。
それが事実かどうかというのは、私たちにとって大した問題ではないのかもしれなけれど。

戦国時代の国が会社なら、自分は領主と同じ立場になり、主人公に感情移入して読めるからこんなにも面白いと思うのかもしれません。