元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

象徴するもの

2022-08-02 | 実生活

今年9月で店を始めて15年になります。30年でも50年でも続かないと困るので、15年だからめでたいとか言うつもりはなく、ただの通過点だと思いたいけれど、過ぎ去った日の雰囲気を懐かしむような気持ちはあります。

プラチナ万年筆が代表的な万年筆のシリーズ3776センチュリー発売10周年を記念して、限定万年筆センチュリーディケイドを発売しました。
黒いボディに金の金具の、おじさんが好みそうな渋い万年筆です。
ペン先が特別で、今までのものよりも少し柔らかく、文字に強弱をつけて書きやすい。
こういう派手さはなく、渋い限定品に個人的に惹かれます。

3776センチュリーは、1万円台の14金ペン先の万年筆で、初めて万年筆を使うという方にもお勧めしやすいものでしたので、高校の同級生が万年筆を買いに来てくれた時にも買ってもらったこともありました。

3776センチュリー発売の時、当店は創業4周年を過ぎた時で、まだ出来立ての店と言ってもいい存在でした。
その頃の気持ちを思い出すと、むしろ今よりも楽天的な明るい気持ちでいたことを懐かしく思い出します。

あの時は店に無限の可能性があると信じていて、いろいろな夢を持っていた。今はあの時には考えつかなかったこともやれていて、店として成長しているはずなのにあの時のような気持ちとは違う。

きっとあの時の自分よりも今の自分の方が成長して、知恵もついて、少しは物事が分かってきたのだと思います。だからあの頃にような楽天的な気持ちになれずいろんなことを気に掛けるようになってきた。それはもしかしたら良いことなのかもしれないけれど、どっちが幸せなのだろうか。

あれからもう10年経ったと思うと、歳月の過ぎる速さに呆然としてしまいます。

センチュリーディケイドが指す2011年から2022年の歳月を私も懐かしく思う。
でも、もし時間を戻すことができたとしても、同じ幸運がまた自分に訪れるとは限らないので戻りたいとは思わないけれど、せめて若かった時のことをたまに万年筆を手に取って思い出せたらいいと思い、センチュリーディケイドを手に入れました。

センチュリーディケイドにはシリアルナンバーが入っていて、当店の創業年と同じ2007があっというものがあったので、それを使うようになりました