逆転で2度目の優勝を果たした安藤=モスクワで2011年4月30日、AP |
【モスクワ芳賀竜也】安藤美姫(トヨタ自動車)が五輪金メダリストを破り、4年ぶりに世界女王の座に復帰した。30日に当地で最終日を迎えたフィギュア スケートの世界選手権は、女子フリーでショートプログラム(SP)2位の安藤が130.21点を出し、合計195.79点で、SP1位だったバンクーバー 冬季五輪金メダルの金妍児(キム・ヨナ=韓国)を抜いて、07年大会に続き2回目の優勝を果たした。日本女子は昨年の浅田真央(中京大)に続く優勝。
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金妍児はフリーが128.59点にとどまり、合計194.50点で2位。1年1カ月ぶりの復帰戦を優勝で飾ることはできなかった。3位はカロリナ・コストナー(イタリア)。
日本人初の大会連覇を狙ったSP7位の浅田はフリー114.13点、合計172.79点で6位と表彰台に届かなかった。世界選手権初出場でSP10位だった村上佳菜子(愛知・中京大中京高)はフリー112.24点、合計167.10点で8位だった。
◇フリーで実力を発揮…安藤
SPトップの金妍児とはわずか0.33点差の2位でフリーに臨んだ安藤。今季はグランプリ(GP)シリーズ以降、フリーは5戦とも1位と抜群の安定感を誇る。その実力を、頂上決戦でもいかんなく発揮した。
グリーグの「ピアノ協奏曲」が静かに流れ出す。1発目のジャンプは3回転ルッツ-2回転ループ。SPでは冒頭のジャンプ後半を3回転から2回転に急きょ 変更したが、フリーのジャンプは慣れ親しんだ要素だ。これをきっちり決めると、3回転ループも成功。2回転半-3回転の連続ジャンプは後半が回転不足と なったが、それ以外は手堅くまとめ、最後の3連続2回転も難なく決めて演技を締めくくった。
SPはシーズン途中で選曲を変えたが、フリーは相当滑り込んでいる印象を受ける。「失敗すると分かっているものは無理にやらない」と安藤。イチかバチかの勝負に懸ける選手もいるが、練習でできないものが試合でできるはずがない。
「完成度」に重点を置く23歳のスケート哲学は、大舞台でも大崩れしなかった。五輪女王の金妍児を上回った安藤は「ずっと順位より内容を求めてきた。きょうの結果は、神様がくれたご褒美」。浅田の調子が上がらない中、さらにスケートの奥義を窮めるつもりだ。【芳賀竜也】