心がぶっ飛んでしまうようなこと、
人生のゴゴゴ・・・と動く音が聞こえるようなこと、
とにかく夢中になれること。
俺はとにかく、そんなのを探していた。
それは物心ついたときから、ずっとだ。
大好きなレコードの中には「それ」があった。
楽器屋に飾ってあるエレキギターの中にも。
白黒だった頃の雑誌「宝島」のなかにもあったし、
友達の部屋を改造した”スタジオ”にも「それ」はあった。
俺達は奈良の高校生だったから、
身近な都会である大阪に憧れた。
大阪にも「それ」が、あるような気がしていた。
そして高校を出た俺達は大阪で一人暮らしをすることになる。
今になって思えば、
憧れていた都会の街で一人暮らしをすることが出来たなんて、
どう考えてもスゴイことだ。
だって
「自由」だし、「自由」だし、「自由」だし・・・他に何が要る?
金は、いつも無かった。ピーピー言ってるのは今でも同じだ、
でもこれはまぁ、しょうがないことではあるのだ。
だって俺達はとにかくあの、
ショボショボした「普通」って奴から脱却するこしか
頭になかったんだから。
どこを見回しても
「普通」、「普通」、「普通」。
だから俺達は憧れの都市に来て、繁華街の真ん中に逃げ込んだ。
ヘビメタにもパンクスにも、なるつもりなどなかったけど、
まだそういう奴等の方が「普通」よりはよっぽど良かった。
そういうパンクの服屋とかは、
今で言う「コスプレ」みたいに見えてあまり好きではなかった。
そんな風に何かの「型」にはまるのはまっぴらごめんだった。
俺は「俺」でありつづける必要があったのだ。
それは今でも変わらない。
俺は「俺」でいるしか他にないし、
そのことで何かを証明しようとしているのかも知れない、
と思うこともある。
俺達が本当に欲しかったものは、
”心がぶっ飛んでしまうようなこと”だったし、やがて
そういうものには確かに、出会えたのだ。
”本当に感動してしまうようなこと”が、世の中には
ちゃんとあるのだ。
いつか何もかもを忘れてしまったとしても、
その感触を忘れることはないだろう。
それは今も、そこにある。