まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

神仏霊場巡拝の道~近鉄特急「あをによし」で2タイプの座席を楽しむ

2023年06月19日 | 神仏霊場巡拝の道

5月27日、神仏霊場巡拝の道の2ヶ所を回り、近鉄の京都駅にやって来た。大阪に戻るのに、観光特急「あをによし」に乗るためである。

2022年4月にデビューした「あをによし」。このところの近鉄特急の車両は、「しまかぜ」や「ひのとり」のような新型車両があるかと思えば、「青の交響曲」や「かぎろひ(団体用)」といったかつての車両を改造したものの往年の外観をとどめているものもあり、バラエティに富んでいる(「青の交響曲」にいたっては、一般車両を改造したものである)。そして「あをによし」は後者に該当し、かつてのエース12200系を改造した列車である。

車内はサロンシート、ツインシートの2種類で、いずれも複数での利用を想定している。しかしながらツインシートに限り、おとな1人+ことも1人の特急料金で1人利用が可能である。

ツインシートもそれぞれでテーブルの形状が異なっており、片方は四角形のテーブルで向かい合わせに着席するのに対し、もう片方は三角形のテーブルで、斜めに着席する。この角度にすることで車窓もより広く見ることができ、斬新だと思う。京都発の場合、まずは進行方向左側がこの座席で、奈良で運転方向が替わった後は進行方向右側となる。近鉄奈良線で生駒トンネルを抜けると、大阪平野を見下ろす側の車窓を楽しむことができる。同じ乗るなら、こちら側のシートに座ってみたい。そしてネットで三角形タイプのツインシートを予約できたのでラッキーと思っていた。

さて、「あをによし」を楽しみに京都に着き、チケットレスのため座席番号を確認しようとしてスマホから予約サイトを開くと・・・何と特急券の購入区間が京都~奈良までとなっていた。予約時は当然京都~大阪難波間と思い込んでいて確認していなかったようだ・・。

あわてて再度京都~大阪難波で検索したが満席。しかし、奈良~大阪難波で検索すると四角形タイプのツインシートに幸運にも空きがあった。これで、途中座席の移動があり、特急料金も余分にかかるが、同じ列車で大阪まで乗り通すことができる。むしろ、1回の乗車で両方のタイプのシートが体感できるので結果オーライ。

「あをによし」という名前から奈良・平城京をイメージした列車で、紫は高貴な色、側面の花柄は正倉院の「螺鈿紫蘭五弦琵琶」をモチーフとしている。また車内も木目調で整えられ、ところどころに天平文様があしらわれている。京都~大阪難波間は朝夕の1往復だけだが、その間に京都~奈良間に3往復設定されている。京都~奈良間で合計4往復設定されているのは関東方面から奈良への観光客を取り込む狙いがあるそうだ。

シートに腰を下ろす。シートは近鉄として初めて家具メーカーに発注したとのこと。「しまかぜ」や「ひのとり」のプレミアムシートとはまた違った落ち着きを感じる座り心地である。奈良までの乗車時間は短いが、その間だけでも贅沢な空間でくつろいでもらおうというコンセプトがうかがえる。16時40分(土日休日ダイヤ)、京都を発車。

ここからは「飲み鉄」もいいでしょう。売店では「あをによし」関連のグッズやスイーツに交じり、クラフトビールや奈良・京都の地酒も置いている。先ほど京都駅でもある程度買い込んだので、ここは「あをによし」のイラスト入りラベルのクラフトビールをいただく。

まずは京都線の区間を行く。車内を見渡すとツインシートを1人で利用する人はそれほどおらず、たいていは正常の2人利用、あるいは親子連れでの利用である。窓に向かって斜めに腰かけている分、視野も広がるし、かといって横向きに座るよりも疲れが少ないように感じる。でもまあ、斜め前に誰かいたほうがええわな・・。

丹波橋に停車後、宇治川を渡る。そのまま京田辺市内を快走し、大和西大寺に到着する。まずはこのまま進んで奈良に向かう。

こちら側からだと平城京跡に復元された第一次大極殿を見ることができる。京都・大阪方面から近鉄奈良線で奈良を訪れる観光客にとって、この景色はプロローグ、盛大なお出迎えだろう。この大和西大寺から奈良にかけての区間は、大和西大寺駅付近の高架化や、線路の平城京跡の外への移設・地下化の計画が持ち上がっているのだが、先の統一地方選挙で新しく当選した奈良県の山下知事は、この計画の見直しを表明している。交通渋滞と景観問題をどうとらえるかであるが、大和西大寺駅付近の高架化は進める一方、平城京跡を迂回して地下化する構想については待ったをかけている。この、平城京跡を線路が突っ切っている景色も奈良の観光スポットの一つという見方もあり、これについては地元でもおおむね好意的にとらえられてるようである。

新大宮から地下に入り、奈良に到着。やはり奈良で半分くらい乗客が入れ替わるようで、京都~大阪難波まで乗り通すのは乗り鉄的要素が強い(JR、阪急、京阪と比べて時間も費用もはるかにかかる)。

ここで座席を引っ越す。特急券購入ではうっかりしたが、1回の乗車で2つのタイプの座席を楽しむことができる。こちらは向かいのシートとの距離も近く、膝を突き合わせる感じである。相客と近しいならこちらのほうがいいかもしれない。

生駒を過ぎ、生駒トンネルを抜ける。大阪平野の眺めは反対側の車窓だが、そこは席を立ってそちら側から見る。時刻は17時半を回っているが、5月末のこの時季はまだ明るい。これが日の短い季節ならちょうど薄暮の景色を眺めることになり、それも「あをによし」の別の楽しみであろう。

後はこのまま淡々と走り、鶴橋、大阪上本町を経由して17時59分、大阪難波に到着。阪神なんば線と合わせて次々列車が発着するホームなので、「あをによし」もすぐに回送列車として発車する。いろいろあったが、ようやく近鉄の新たな名物列車に乗ることができた。

さて、本題である神仏霊場巡拝の道は、忌中が明ければ大阪21番・水無瀬神宮から再開予定である。これからもさまざまな祈りが続くことである・・・。

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