6月23日、マツダスタジアムでの観戦前の時間をどう過ごすか。それほど深く考えずに、可部線の延伸区間(可部~あき亀山)に乗りに行くことにした。元・JR全線乗りつぶし経験者だが、その後開業した区間は手つかずのところがある。その一つが可部線の延伸区間である。
ホテルで朝食を取り、広島駅に来たのは朝の7時半。平日なら通勤・通学客が多く降り立つ時間帯だろうが、この日はこの時間からカープのユニフォーム姿の人が結構いる。情報では開門11時、試合開始は13時30分とあったが、この人たちは今からでも2階自由席にでも並ぶのだろう。
7時41分発のあき亀山行きに乗る。車両は昨日からずっとお付き合いの227系だ。可部線の車両もほんの少し前までは105系、103系、なぜかたまに乗り入れる115系など、それこそ「國鐵廣嶋」のものだったが、リニューアルである。
横川から可部線に入る。太田川の放水路を渡り、三滝に到着。この先にある三瀧寺は、最近始めた中国三十三観音の第15番で、またいずれ訪ねることになる。
可部線の沿線も住宅やマンションが建ち並び、大型ショッピングセンターもある。広島勤務時代はこの一帯を担当していたこともあり懐かしく思う一方、沿線の様子もいろいろ変わったなと思う。
緑井、八木という地区に入る。2014年8月の広島豪雨災害では74人の死者を出したが、その多くがこの地区である。ここには豪雨災害後から数か月後に様子を見に行ったのだが、車窓から見ても砂防ダムが造られている一方で、5年が経とうとしてもまだまだ爪痕もあるのかなと思う。広島市が策定した「復興まちづくりビジョン」では、災害発生から5年を「集中復興期間」、その後5年を「継続復興期間」としており、これだと今はちょうど「集中復興期間」の最終期間で、とりあえずハード面の一定の整備は終え、今後は次の段階に進む頃合いだと言える。これからの町づくりというのも見守ってみたい。
再び太田川を渡り、可部に到着。ここから延伸区間ということで、運転席の後ろに移動して前方の様子を見ることにする。
可部線はかつて横川~三段峡間を走っていた。元々はさらに北上して浜田まで結ぶ構想があったのだが御多分に漏れず資金難で建設は中止。おまけに非電化区間の可部~三段峡間も利用客の減少で2003年で廃止となった。ただ、可部と隣の河戸の間は住宅も多く、地元亀山地区の運動もあり、路盤等はそのまま残された。その後、広島市、JR西日本、国土交通省の間でさまざまな折衝が行われた末、「電化延伸」の形で2017年に可部~あき亀山間が開業した。廃止されたJRの路線が復活した最初の事例である。
さらに進んであき亀山に到着。廃止区間にも「安芸亀山」という駅があったが、それとは別である。島式ホーム1本で、側線もあるがここで完全に「行き止まり」の構造である。さすがにこの先まで復活させようという話はないようだ。
駅前には小ぶりなロータリーがあるが、その先は工事中である。降り立った時は「ここも豪雨災害に遭ったのか」と勘違いしたが、かつて県営住宅があったところ、ここに広島市立安佐市民病院を移転させるための工事だった。建物の老朽化にともない現在地での建て替えか移転かで議論も分かれたそうだが、最後には現在地に一部機能を残しつつ、移転させることになった。あき亀山駅前に将来の構想図の看板があり、市民病院の移転というのが可部線の一部復活の後押し材料になったのかなと思う。
折り返し列車は1本見送り、駅前を少し歩く。坂道を少し上るところに伊勢社がある。伊勢社そのものは江戸時代にできたそうだが、ここには「長井ふたたびの宮」という額が掲げられている。可部線の延伸が決まったのにともない、可部線と同じく「ふたたび」の願いが叶うお宮として、復縁や再会など(中には、金が返ってくる?)のご利益を願うスポットとして地元ではPRしている。
その横には旧河戸駅の駅名標と待合室が移築保存されている。旧河戸駅は現在の河戸帆待川とあき亀山の中間にあったが、このたびの延伸で2駅ができる形になった。地元の人とすればかつての廃線の無念と延伸の喜びを後世に伝える意味もあるのかな。
ただ一方でこの先、三段峡までの区間がどうなっているか、また三段峡そのものも遠い存在になったがどんな様子か、それも気になるところである。それらもまた見ることができればと思う。
あき亀山駅に戻り、広島行きの列車に乗る。あき亀山を出る時には数人の客だったが、その後駅からの乗車が多く、カープのユニフォーム姿の人も結構見るようになった。
広島駅に戻り、時間があるので駅前で散髪をした後、昼食ということで駅ビルに新たにできたekieに移転したお好み焼の「麗ちゃん」に向かう。人気店ということで11時の開店時にはすでに長蛇の列になっていた。結局口にするまで1時間近くかかったが美味しくいただき、多くの人に交じってマツダスタジアムに向かうのであった・・・。