9月8日、JR奈良駅横のスーパーホテルで迎える朝。日曜の朝くらいゆっくり寝ればいいのに、いつもの習慣で5時過ぎには起床する。まずは「飛鳥の湯」にて朝風呂とする。
そして朝食。メニューは和、洋ともに揃っており、奈良の郷土食として柿の葉寿司や茶粥もある。ちょっと欲張りすぎたかな。味噌汁の代わりに大阪の肉吸いもあったりする。
身支度を終え、8時すぎにチェックアウト。駅のコインロッカーに荷物を預け、これから向かうのは春日大社である。JR奈良駅からだと結構離れており、バスの便もあるのだがせっかくなので歩いて向かうことにする。まずは三条通りを行くのだが緩やかな上りが続く。
興福寺に着く。今回は札所めぐりの対象ではないが、西国三十三所の南円堂に手を合わせる。
そしてその先にあるシンボルの五重塔だが、明治時代以来となる大規模な修復工事に入っており、前回大型連休中に来た時にはまだ姿を見せていたが、今はすっかり作業用に覆われている。修復の完了予定は2031年というから大掛かりである。ただこのところ、こうした国宝や文化財の建物の修復現場をあえて公開し、その時ならではの様子を見てもらって文化財保護への理解を深めてもらおうというケースも多いことから、興福寺でもどこかの機会で足場に上がって塔を間近に見ることができるかもしれない。
興福寺からは多くの鹿に出会う。ちょうど観光客が動き始める時間帯で鹿せんべいの店が開きつつあり、早速鹿せんべいをあげている観光客も多い。鹿もわかっているのか、寝床である飛火野や春日大社、若草山あたりからこの時間にせんべい目当てで出てくるそうだ。
私などはこのところ、鹿を見るとジビエとか、そちらのほうをイメージするのだが、奈良公園の鹿は春日大社、神の使いであり天然記念物にも指定されている。その一方、同じ奈良でもところ変われば「ならジビエ」というブランドもあるそうで・・。
春日大社の参道に入る。この時間はまだ参拝する人の姿も少ない。そんな中、先ほど興福寺やら奈良公園の鹿やらで少し時間を取ったので、参道ではやや急ぎ足となる。春日大社の参拝じたいは何も慌てることはないが、今回はある行事に間に合うように出てきたためである。
その行事とは「朝拝」。春日大社では毎朝参拝所横の直会殿にて神職が祈りを奉げているが、祭事の日を除いて一般の参拝者も参加できるとある。各地で発生する災害からの一日も早い復興を祈願するもので、申込も必要なく、当日8時50分頃に集合とある。何とか間に合った。
入口で巫女さんから「大祓詞(おほはらへのことば)」が書かれた冊子「神拝詞」を受け取る。これは持ち帰ってもよいとのこと。ベンチには10人あまりの参拝者が座っており、やがて神職7~8人が入って来る。
まずはお祓いを受け、冊子に従って「大祓詞」を読む。振り仮名があるのでそのまま読めばよいのだが、やはり古い言い回しのため、初めてだとかんでしまう。一方神職の皆さんは仕事とはいえ暗記してよどみなく唱えており、さすがである。
「大祓詞」というのは寺のほうの般若心経に当たるのかな。この札所めぐりは神仏霊場ということで、神社でこうした祝詞を奏上できるのも貴重なことである。これまでは「祓え給え清め給え」とだけ唱えていたが・・。
これで朝のお勤めが終わり、宮司からの挨拶がある。春日大社は1300年の昔から国の平和と繁栄を祈り続けてきたが、近年は東日本大震災をはじめとして全国で地震、水害等による被害が相次いでおり、受難した人や地域の一日も早い復興を祈るようになったのこと。
直近で大きな災害といえば、今年の元日に発生した能登半島地震である。能登半島は地震の起こりやすい地域だが、珠洲市にある春日神社では、2年前の地震で倒壊し昨年再建されたばかりの石鳥居が、今回の地震でまた倒壊したとのこと。春日大社の宮司は地震から数ヶ月後、道路がようやく開通したことでお見舞いを兼ねて現地を訪ねたが、数ヶ月が経ってもまだ「復興」が始まってもいない様子にショックを受けたとのこと。こうした災害も時間が経てばニュースでの扱いも小さくなってしまうが、神職の務めとして本当の復興ができる日まで祈り続けるとおっしゃっていた。
それにしてもこのところ、どこかの地域が輪番でもあるかのように何らかの自然災害に遭っているように思う。
この後は、神職が摂末社を参拝するので希望の方はご一緒に・・とのこと。10人ほどが神職について行く。こちらの摂末社エリアは「若宮十五社めぐり」となっている。参拝のほか、それぞれの神社の解説もしていただく。
まずは若宮神社。毎年12月の「春日若宮おん祭」で有名である。春日大社は藤原氏により国家の安泰を祈願するために創建された神社で、元々は個人の願いを聞き届けるところではなかったという。そちらを引き受けるため?に建てられたのが若宮神社である。また神楽殿も設けられ、神楽や伝統芸能が奉納されたことから芸能の神としても信仰されている。
夫婦大国社は現在20年に一度の修復中で、現在は仮殿にて大国主命と妻の須瀬理姫命を祀っている。大国主の夫妻を祀るのはここが唯一だという。
広瀬神社はお稲荷さんと同じく衣食住を守護する神様、そして右手の葛城神社は一言主神を祀る。
三十八所神社。伊弉諾命、伊弉冉命、そして神日本磐余彦命(神武天皇)を祀る。三十八とは、役行者が日本の名だたる38の神を吉野の金峯山に勧請して祀ったことからその名がつけられたとされるが、春日大社の場合は三十八の「三」に着目して、先の三柱を祭神としているという。
この先の神社については、通路の脇からまとめて参拝。
再び若宮神社に戻り、ここで改めて若宮十五社の説明がある。
南門に戻って来た。この頃になると個人、団体の参拝者、観光客も多くなり、外国語も飛び交うようになる。
最後に、当地の地主神を祀る榎本神社に手を合わせ、南門から境内に入る。ここで神職との参拝は終了となった。
本来なら初穂料(500円・・・ただし10月から700円に変更)を納めて本殿前の中門から改めて手を合わせるところだろうが、前回も訪ねたし、また今回は「朝拝」に参加できたので、手前の参拝所からもう一度手を合わせるにとどめる。
そうそう、朱印をいただかねば。前回は書き置きのみでの対応だったために札所クリアとせず、こうしてもう一度来ることになったのだ。ただ改めて日程を組み、奈良に宿泊した翌朝に「朝拝」や神職との若宮めぐりができたので、かえって良かったと思う。今度は無事直書をいただいた。
これで今回の札所めぐりは終了。まだ午前中だが、他の奈良のスポットには立ち寄らず、青春18きっぷで広島に戻ることにしよう。その前に、次回の神仏霊場の行き先決めだ。
候補となったのは、
・四条畷神社(大阪20番)
・清水寺(京都37番)
・住吉大社(大阪1番)
・日牟禮八幡宮(滋賀10番)
・朝護孫子寺(奈良17番)
・車折神社(京都11番)
ここであみだくじが出たのは、住吉大社。何なら帰りに立ち寄ることもできるが・・周りに他の札所もあるので、そちらと合わせて訪ねることにしよう。
帰路の参道でも多くの鹿に出会う。中にはツノを木の枝にこすりつけているのもいる。
そのまま三条通りを経由して、JR奈良駅に戻る。11時発の大和路快速で一気に大阪に移動。ここまで長くなったが、ついでなので広島への復路についても一気に書いてしまおう。
大阪から新快速に乗車。大阪で乗客が入れ替わったこともあり無事に座れた。もっとも、暑さのためにブラインドを下ろさざるを得ず、須磨海岸、明石海峡大橋の姿はブラインド越しに薄く見えるだけだった。
さて、青春18きっぷの有効期間最後の日曜日である。姫路からは播州赤穂行きに接続するが、この列車が相生で山陽線の岡山行きに接続すること、そして12両から4両ということで大混雑。そして相生に着いたが、ホームの向かいに停車していたのはさらに1両減って3両。そこに多くの客が殺到するのを見て、乗車を見送った。結局そのまま播州赤穂行きに乗り続け、赤穂線で岡山に出ることに。
播州赤穂からは2両編成の115系セミクロスシート車。しばらくはボックス席で足を伸ばしてのんびりくつろぐ。青春18きっぷの混雑時季、相生~岡山の1駅を新幹線でワープする、あるいは赤穂線で迂回する・・こうした手がある。
岡山県に入り、日生の手前でちらりと海が見える。小豆島の大部に渡るフェリーがあるのだが、昨年12月から運航休止となっている。こうした休止となったフェリーが復活した例というのはほぼないから、このまま廃止となるのだろう。
この先、備前市内の駅のホームには「マナビタマエ、ヤキタマエ、マア、キタマエ」の文字が入る案内幕が掲げられている。備前市の観光PRで、閑谷学校(学び)、備前焼(焼き)、そして北前船(「来たまえ」のシャレ)である。ここにはないが冬の日生の牡蠣、カキオコも有名だし、そう、バファローズ~ドジャースの山本由伸投手とそのお隣さん・頓宮選手の出身地でもある。
のんびりした赤穂線だが、長船あたりから少しずつ乗客が増え、2両ということでボックス席も満席、立ち客も多く出るようになった。その中、山陽線と合流する東岡山でしばらく停車。貨物列車の通過待ちかなと思ったが、隣のホームに相生方面からの列車が入り、先に発車していった。行き先は「糸崎」とある。あらあら、先に出るならそういう案内があってもよかったのに・・。
さて、岡山である。コンコースでは、今月末から岡山県北部で開催の「森の芸術祭」のPRである。山陰線の観光列車「○○のはなし」も臨時で伯備線を走るほか、新型電気式気動車「DEC700」が初めての営業運転で姫新線を走るとも報じられている。行く機会があるかどうか。
時刻は15時過ぎで、広島まではまだ3時間以上かかる。先ほど東岡山で先行する糸崎行きに乗れば展開は変わったのだが、今からでもそう遅くならない時間に帰宅できる。
・・ただ暑いし、また明日からに備えてゆっくりしたい。もう青春18きっぷの元は取れているし、往路の新幹線はポイントで乗車したということもあるので、岡山からは新幹線に乗ろう。臨時の「さくら587号」に乗り、一気に広島へ・・・。