3月31日、早いもので今年も3ヶ月経ってしまった。そして、今日でいわゆる「2006年度」というのも終わり。
今日限りでくりはら田園鉄道、鹿島鉄道が廃線になるという。宮城にあるくりはら田園鉄道はともかく、鹿島鉄道なら十分日帰りで行ける範囲なのだが、どうもあの線については別に廃止になろうがどうでもいいやという感じがする。確かに一部のマニアや、一部の学生が「カシテツを救え!」という運動をやっていたようだが、結局クルマ社会の茨城県民の支持を得られなかったということで、またその運動内容やイベント内容もマニアの自己満足だったのかな・・・というくらいのものだったから。
それはさておき、天候は今ひとつなのだが出かけることにする。ちょうどJR発足20周年記念の青春18きっぷも、定価の8000円分は既に乗っており、あとは利息のようなものである。向かったのは鹿島鉄道とは全く別の方向の東京駅。これから乗るのが5時20分発の静岡行きというやつである。この列車、大垣から先ほど着いた「ムーンライトながら」の折り返しというやつで、特急型の車両に何もなしで乗れるというもの。それを知ってか、乗車口にはすでに行列が出来ている。東京23区内くらいなら始発電車に乗ればこの時間に東京駅に来ることはできるだろうし(私もそうだった)、また昨夜「ながら」を宿代わりにして、そのまま折り返しで東海道に向かう人もいるだろう。東京駅発車時点で座席はほぼ埋まり、逆に途中の品川だ、川崎だで乗客が増え、デッキや通路に立つ人があふれかえっている。これからどこかに向かう人もいれば、逆に朝帰りの人も混じる。何とも妙な空間だ。私も、今朝は3時半起床だったこともあり、眠るような、外を見るような曖昧な感じで西へ向かう。湘南の海が広がっているのはかすかに憶えているが・・・。
天候が今ひとつということもあり、富士山の姿は見えないまま、東京から2時間半で富士着。ここで下車する。今日はこの後、身延線を北上するのだ。この線に乗るのも10年ぶりくらい。列車まで時間があるので、改札から外に出る。富士市は製紙業の街であり、外に出ると製紙工場独特のにおい(ここで「匂い」と書くか「臭い」と書くか、すごく迷う。「匂い」ではないが、「臭い」と書くのは失礼なことだ)がするのと、側線に車扱のワム車が停まっているのを見て、富士市に来たんだなと実感する。
さて、身延線である。ホームには中高年層を中心に、乗車口に行列ができている。青春18きっぷのほかに、JR東海が販売している休日乗り放題きっぷを持つ人が多い。おそらく、身延へ向かうのだろう。身延山久遠寺にある枝垂桜が見ごろを迎えているという。それを観に行くのだろう。私もその一人だ。2両編成の列車は通勤時のようなラッシュ。JR東海も旧国鉄型の113系・115系が全て一線を退き、輸送を受け持つのは313系。それも最近ではセミクロスのほかにロングシートタイプも出ているとか。
富士山は見えないが、沿線の桜の木は今を盛りと花を咲かせており、車内からも歓声が挙がる。山の中なので開花も遅いのかなと思いきや、暖冬だったためかちょうど見ごろである。先ほどの眠気も覚め、車窓に目を凝らす。これで晴天だったらよかったんだが・・・。
富士から1時間20分で身延着。ここで乗客のほとんどが下車。小さな駅のホームが人であふれかえり、駅前のバス乗り場に長蛇の列が出来る。みな久遠寺に向かうのだ。バスがやってきたが1回で積みきれず、わたしも1本待ってバスに乗る。駅から久遠寺までは6キロ以上あるとかで、さすがに歩いたのでは時間がかかるとのこと。桜の時期に合わせて、駅からの路線バスのほかに、街中の駐車場からのシャトルバスも出しているようだ。久遠寺が桜の名所だったのを知らなかったのは私くらいのものか。
バスの吊革につかまること15分で、久遠寺下のバス停に着く。門前町を抜けると堂々とした山門。これをくぐると寺なのだが、その前に立ちはだかるのが菩提坂。287段の石段が壁のごとく前方に立ちはだかる。迂回路はあるのだが本式にはこの石段を登らなければならないようで、挑むしかない。これ、ビルにしたら何階分の高さだろうか。「南無妙法蓮華経」の七文字のように、石段のブロックも七つに仕切られているのだが、参拝客は皆ゼイゼイ言いながら石段を登る(というより、這い上がる)。私も給水をとりながら、何とか気合で登りきる。石段の数だけなら讃岐のこんぴらさんが多いのだが、この傾斜は体力を消耗するものだ。それにしても登りきって後方を振り返ると、参拝客の姿が何かにすがってくるような、お釈迦様の「蜘蛛の糸」にすがるような亡者たちのような姿に見えてしまう。
そしてたどり着いた本堂。達成感のようなものを感じる。堂に入り日蓮像に向かって頭を下げる。
参詣を済ませた後、枝垂桜である。先ほど息を切らしながら石段を登ってきた参詣客たちが、開放的な表情になって桜に見入っている。樹齢400年とかいう枝垂桜。ちょうど風が吹き抜けており花びらを散らしている。それにしても、古いお堂と桜の樹の取り合わせというのがよい。先ほどまでの疲れが癒されるのを感じる。ちょうど見ごろに来ることが出来てよかった。
しばし桜の風情を楽しんだ後、再び石段を降りて久遠寺を後にする。さらにこの後、身延線を北上する。次に目指すのは、下部温泉・・・・。(続く)