10月から近鉄から分離して誕生した養老鉄道。桑名~大垣~揖斐の区間を結ぶ路線である。大手私鉄の一路線から、地元密着の鉄道としてどのように生まれ変わるのか。このたび大垣に出かけることがあったので、その前にこの路線に乗車することにした。近鉄時代もかなり昔に桑名から大垣まで乗っただけで、実質初めての訪問といっていいだろう。
近鉄の桑名駅に降り立つ。養老鉄道の乗り場は従来通り大阪方面行きホームの片方。そこを柵で仕切り、乗り換え用改札口を設けている。養老鉄道の開業により、桑名駅はJR東海、近鉄、三岐鉄道北勢線(西桑名駅)、養老鉄道の4社の接点となったとともに、標準軌、狭軌、ナローゲージという3種のゲージを体験できる拠点でもある。
一度近鉄の改札口を出て、近鉄の窓口で「養老鉄道休日フリーきっぷ」を購入。休日一日乗り放題で1000円。桑名から揖斐までの通し運賃が910円だから、購入価値は十分にある。これを提示して養老鉄道ホームに戻る。入っているのは近鉄の旧標準色である赤一色の塗装の車両。今のところ、近鉄と養老鉄道の違いは柵でしかわからない。それもそのはずで、車両・線路・駅施設は近鉄から借り受けるという「上下分離方式」とかいう経営方式という。借り物だからそれほど手をつけないということか。
さて、昼間の列車ということで乗客も少なくのんびりと発車。右手に揖斐川沿いの濃尾平野、左手には鈴鹿山系という風景。近郊ローカル線という風情でのんびりと走る。小さな駅に次々に停まり、その都度運転手がドアを開閉するワンマン列車。その駅も近鉄からの借り物のためか、まだ日が経っていないためか、駅名標の表示などは近鉄時代そのまま(多少帯びの色が違うくらい)である。
多度を過ぎて三重県から岐阜県に入り、桑名から40分で養老着。養老鉄道の線名でもあり、養老の滝の下車駅ということなので途中下車する。ホームの屋根には無数のひょうたんがぶら下げられている。木造の由緒ある駅舎も、養老という駅名に何だかぴったり合っているようだ。
養老の滝といえば孝子伝説で有名であり、滝つぼから涌き出た酒を父親に持って帰ったのに入れたのはひょうたんである。駅の中に喫茶店兼土産物店があり、飾り用のひょうたんが並べられていた。
さてここから養老の滝に向かうわけだが、この列車で降りた客は地元の人ばかりのようで、滝に向かうのは私一人。養老の滝までは、養老公園の中を通り、川沿いの坂道を歩くこと40分。最後は急な石段を登り、ようやく滝つぼにたどり着く。華厳の滝、袋田の滝のような落差や豪快さにはやや欠けるが、何だか品があり、清らかな流れに見える。秋口とはいえ40分も歩けば暑く感じた後で、涼しさを感じる。うーん、もっと季節が後であれば紅葉を楽しめるスポットなのだそうだが、あいにくこの時期は季節としては中途半端だ。
下山途中に養老神社というのがあり、この石段のたもとに涌き水が飲めるスポットがある。本来ならひょうたんにくべるところだろうが、あいにく持ち合わせがないのでペットボトルのお茶を空けてその後に水を汲む。冷たくて実にうまかった・・・。