山口線でこの春から「DLやまぐち号」が運転されている。いつもなら「SLやまぐち号」てしてC57 1号機が牽引するのだが、2020年10月に故障して離脱。その後11月まではD51やディーゼル機関車(DL)のDD51が代役を務めていた。
そして2021年。SLの2車両は引き続き検査、修繕を行うこととなり、DD51が当初から使用され、列車名も「DLやまぐち号」として運転されている。期間限定ということもあるが、ディーゼル機関車牽引の客車列車というのは私自身の昔の旅を思い出させることもあり、一度乗ってみようと思っていた。
新山口から乗るか、津和野から乗るか。4月中旬に思い立って、祝日の4月29日の空席を検索する。いずれもグリーン車は満席だったが普通車は十分余裕があるようだ。レトロ風のボックス席で十分。そして、アクセスをどうしようか考える。そこでまず思いついたのが、同じ山口県内、新下関~東萩を走る「○○のはなし」。津和野~東萩はバスで結ぶが、時刻表を見ると新下関~東萩~津和野~新山口と回れば両方の列車に乗ることができる(逆だと、「◯◯のはなし」の東萩発に間に合わない)。
ただ、「◯◯のはなし」の指定席はネットで確保したもののあまり眺めがよくない席のようだ。キハ47の改造車両だが、窓側のカウンター席でも正面に窓枠が来る座席が結構ある。まあ昨年2回、それぞれ違う車両に乗ったことがあるし、今回はそれほどこの列車にこだわっているわけではない。何なら、別ルートで津和野に入ってもいいかなと思うようになった。
例えば、広島から高速バスで益田まで行って、山口線をずっと下るのはどうだろうか。広島と各地を結ぶバスもこの機にいろいろ乗っているところだ。
広島~益田のバスは2路線あり、一つは国道191号線、戸河内インターから美都温泉経由。もう一つは六日市インター経由。この中で、広島駅8時05分発の六日市インター経由便に乗れば、益田駅には11時16分着。時間はわずかしかないが、11時23分の普通山口行きにつながる。仮に遅れても13時06分発の特急に乗れば、津和野からの「DLやまぐち号」に間に合う。このルートはたどったことがないが面白そうで、「◯◯のはなし」の指定席券をネットにて別の列車に変更した。
六日市といえば、先日訪ねた岩日線改め錦川鉄道ともつながる。バスが益田までどこを通るのか、石見交通の時刻表と地図を見比べると、その岩日線の終点に設定されていた山口線の日原も経由するようだ。正確には日原駅ではなく、少し離れた道の駅に停まるとあり、道の駅からの山口線の最寄駅は一つ益田側の青原である。それなら、上に書いた山口行きの列車にも余裕で間に合う。先日の続きで「仮想・岩日線」がつながりそうだ。
・・・4月29日、前夜からの雨が続いている。午後からは回復の見込みとのこと。この日の計画では12時すぎに津和野に着き、15時45分の「DLやまぐち号」の発車まで津和野の町歩き。だからメインのところでは雨が止むものと期待したい。
広島駅新幹線口に向かう。まずは券売機で乗車券を購入。日原(道の駅)までである。この時間、県北、山陰方面へのバスが次々に出発するが、いずれも数人程度の乗車。
私が乗った石見交通の益田行きも5~6人というところ。席は自由席で、前から2列目を確保する。最前列はコロナ対策で使用不可だった。最前列の扱いについては、バス会社によってさまざまあるようだ。
広島バスセンターでも乗客は1人のみ。この路線は乗車専用、降車専用の停留所がなく、途中区間での乗り降りも可能だが、それほど多くの利用があるとは考えられない。
広島西風新都インターから広島道に乗る。広島北ジャンクションから中国道に入る。
県北の山深いところで、次に停まるのは加計。加計といえば、かつての可部線の可部~三段峡間の廃止区間の中心駅だったところ。可部線もかつて浜田まで結ばれる話もあったがこちらも実現しなかった。よくまあ、このような山深いところに線路が敷かれていたものだと思う。その加計駅跡には今も気動車が保存され、イベント時には公開されているという。
交通量もほとんどない区間で、広島県から一瞬山口県に入り、休憩場所でもある深谷パーキングに停車。中国道のローカル区間で見られる、トイレと自動販売機だけの実に簡素なところ(山陽道と比べて施設も古い)。10分休憩だが、雨も降っているし山の中は少々寒く、用を足すとあとはさっさとバスに戻るだけだ(男性客の一人は煙草を吸っていて、貴重な一服時間となったようだが)。
深谷パーキングを出ると島根県に入り、雨が降り続く中、六日市インターで下車。しばらく走り、吉賀町役場の手前にある六日市バス停に到着。岩日北線の駅予定地はどの辺りだったのかな。ここで初めての下車客がいた。
六日市から益田までは国道187号線を通る。広島~益田(終点・石見交通本社)間を3時間20分ほどで走るが、そのうち1時間20分は六日市から先の一般道区間である。停留所の数も増え、この区間の路線バスも兼ねているようだ(一部は、地元の生活バスも運転されている)。一般道に入り、途中のバス停から乗る人もポツポツ出てきた。
この区間、横を流れるのは高津川。この川も清流として知られており、過去に何度も水質ランキングで日本一となったことがある。このルートを走るのは初めてだが、中国各地にはまだまだこうした私が訪ねたことのない名所が多く存在する。この後も高津川はさまざまな表情を見せる。
また岩日線のことになるが、もし全線が開通したとなればこの高津川に沿って走っていたはずで、そうなると錦川、高津川という清流2本を眺める路線としてPRできたのではないかと思う。国鉄~JR~第三セクターとして存続したかどうかはともかく、南の「錦川清流線」に対して、北の「高津川清流線」と名乗っていたかもしれない。
そういえば、今乗っているバスには「清流ライン高津川号」という名称がある。この日は雨なので、清流もやや濁って見えるのが残念だ。
吉賀町から津和野町に入る。目指す日原はかつて日原町だったが、平成の大合併にて津和野町と合併した。広島からこうした形で津和野に入るというのも意外である。日原で国道9号線と合流し、国道187号線との重複区間に入る。
10時50分、日原(道の駅)バス停に到着。「道の駅 シルクウェイにちはら」の敷地内に入り、ここで下車する。清流高津川もすぐ横を流れており、夏には鮎釣りやカヌーも楽しめるという。
売店にも地元産の野菜その他が充実している。また日原は鮎、イノシシの他にワサビが名物とある。こういうところでイノシシ肉を買ってみたいのだが、冷凍が必要である。クルマならともかく鉄道の旅では冷凍ものを長時間持ち歩くのは難しい。その代わり、珍しいのでワサビのドレッシングの瓶と、鮎のうるか(酒によく合う)を購入する。これも今は「津和野みやげ」ということになる。津和野の観光案内版も出ている。
当初の予定では、道の駅で軽く食事でもして青原駅に移動し、11時46分発の山口線の列車に乗ることにしていた。ただ現地に来て、同じバス停にて津和野温泉行きの石見交通の時刻表を見つけた。益田~津和野を結ぶ路線で、11時17分発。道の駅での滞在時間は短くなるが、このバスに乗ると津和野駅だけでなく観光スポットの町並みも通る。列車で移動するよりも津和野での滞在時間を長く取れるし、同じ道の駅である津和野温泉で一風呂もいいなと思った。
津和野には過去何度か訪れているが、こういうルートで入るのは初めてで新鮮である。やって来たバスには他の乗客はおらず、貸切状態にて国道9号線を走る・・・。