プロ野球交流戦もいよいよ終盤。結局これまで得意の交流戦でもオリックス・バファローズは浮上のきっかけをつかめず、とうとうリーグ最下位を走る羽目に。その中で対戦したのが、こちらもセ・リーグ最下位のDeNAベイスターズ。
14日はたまたまぽっかりと時間が空いたので、それならば行こうと大正ドームに現れる。この日の先発はオリックスが2年目19歳の塚原、DeNAが王(ワン)。交流戦の優勝もなくなり、リーグ最下位同士の対戦だけにさみしい感じがする。オリックスファンとしては、塚原がプロ初勝利をつかむかどうかというのが関心どころだろう。
ただ、これもいくらかのファンは思っていることかもしれないが、私としては、今季のDeNAにあってしっかりとクリーンアップに座り、ここまで高い得点圏打率、そして前日には平野から決勝の本塁打を豪快に放った「あの男」を久しぶりに見てみたいというのがあった。今のDeNAというチームが合っているのかもしれない。ラミレスとのコンビも、かつてのタフィー・ローズとのコンビを彷彿とさせるものがある。それが大阪で見られるのも楽しみ。いやむしろ、塚原よりもそちらを見たくて訪れたと言ってもいいだろう。
さて試合、ワインドアップから塚原が力いっぱい投げ込む。ストレートとフォークを軸にした投球で、まずは荒波、石川という俊足の打者を打ち取り、早速に「あの男」、中村紀との対戦である。私と年齢が同じ、今年39歳を迎えるベテランに19歳の若武者はどう立ち向かうか。
結局はフルカウントまで行ったものの最後は四球という結果に。ただ続くラミレスをボテボテのゴロに打ち取り、まずまずの立ち上がりを見せる。
一方のDeNA先発の王、これまで知らなかった投手である。てっきり、よほど投手の人材に苦しんだベイスターズが、横浜の中華街からスカウトしてきたのかと思ったほどである。もっとも、帰宅してから選手名鑑を見ると台湾のラニューにも在籍経験があり、横浜では2010年からプレーしているという。なるほど。で、登板のない時は中華街で包丁を握っているとか・・・?
まあそれは冗談として、そう思いたくなるような投球内容だったので。まずは初回、先頭の後藤にいきなり死球を与える。続く川端が送って、水戸黄門のテーマ曲で登場する「助さん」ことスケールズにも四球。
ここで迎えた李大浩。低めの球をすくい上げると打球はぐんぐんのびてバックスクリーンへ。これが今季、これまでプロ野球の試合を観戦して初めて遭遇した本塁打。それも、「規格外のその身体で会心の一撃放て」という応援歌どおりの李大浩の一撃というのはすばらしい。これで3点を先制し、塚原には大きなプレゼントとなった。
続く2回は塚原が3人で片づけたのに対し、王は大引に四球、齋藤が送って後藤が安打の後、川端の内野ゴロの間にもう1点を与える。続くスケールズにも死球を与え、結局1回と合わせて2安打5四死球という散々な出来。やっぱり中華街から引っ張ってこられた投手かなということで、結局この回で降板。
4回、塚原は中村紀と2度目の対戦。ここはベテランの技でうまくセンター前に弾き返す。一塁側からも、「ノリ、すっかり元気になったやん」という声も。契約をめぐるゴタゴタで必ずしもいいイメージを持っていないファンは多いと思うが、一方で「ミラクル&パワー」で近鉄最後の優勝に導いたその打撃を今でも憶えているファンも多いだろう。
・・・という感傷にふける間もなく、ローズ・・・ではなかったラミレスが振り抜いた打球は一直線にレフトスタンドへ。これで4対2。DeNAとしては願ってもない得点にベンチも、スタンドも大いに沸く。後姿ではあるがカメラに向かってのパフォーマンスも快調だ。この人も、巨人から離れてこのチームでのびのびやっているように見える。
それでも塚原は後続を断ちきって大きな傷口をつくらない。一方のオリックス打線も、DeNA2番手の小杉の、球の出所が見えにくい投球に苦戦し、追加点はおろかヒットも出ない。序盤で得点を挙げ、塁上もランナーで賑わせていたが、それは四死球によるもので、「貧打」が解消されたものでないのが厳しいところだ。
試合のポイントは6回表。勝利投手の権利を得た塚原だが、一死から石川にヒットを打たれる。そして中村紀との3度目の対戦だが、まるで勝負を避けるかのように四球を与える。この辺り、目に見えないプレッシャーを感じているのか。ここで交代となる。本当はこういうピンチを自分でどう断ち切るかがステップアップの一つの要素なのだろうが、ベンチとしてはまずは勝利ということでこれから継投策にでる。
続く香月はラミレスに四球を与えて満塁のピンチを招いただけだったが、その後の吉野が筒香、金城という好打者を何とか抑えた。結果としてこの回をゼロでしのいだことが大きかったということに。その裏、後藤のタイムリー2塁打で1点を追加し、5対2となった。中継ぎ~抑えを考えれば、普通ならこれで塚原のプロ初勝利はゆるぎないものとなった・・・・はず。
それが終盤にヒヤヒヤさせられることに。7回から8回にかけては、万年左のエース「候補」の中山が登板して4者連続三振という好投を見せる。そして中村紀を迎えたところで、「右対右」にするべく、平野が登板。ただ前日には本塁打を打たれているし、平野~岸田のリレーといっても一昨年や昨年のように必ずしも盤石とはいえないだけに、「何か起こらなければいいのだが」と一抹の不安が頭をよぎる。
果たして、中村はまたもうまくセンター前にさばいて出塁、続くラミレスも今度は詰まった当たりがポトリと落ちるヒットに。そして筒香のところで、途中から一塁に入った山﨑がエラーして1点を返される。続く曲者・金城にもうまく打たれて結局この回で2点を返され、5対4。試合の展開は全くわからなくなった。塚原の初勝利がベテランたちの不甲斐ない投球で消えてしまうのか。いつの間にか平野も劇場を新規開業したらしい。
そして9回は、劇場の先輩である岸田が登板。DeNAの代打攻勢をうまくかわしてあっという間に2死に持ち込んだのはいいが、1番に戻って荒波に粘られた末、四球を与える。おまけに次の石川のところで盗塁も決められる。もしこれで同点なんてことになって塚原の勝ちが消えたりした日には・・・・とヒヤヒヤとさせられる。仮に石川が四球などで出塁して、最後の最後で中村紀を迎えるという場面になったら・・・・。
石川も粘ったが最後は遊ゴロに倒れ、やれやれ、何とか同点に追いつかれずにゲームセット。19歳のプロ初勝利を、先輩投手たちがヨレヨレになりながら何とか守ったという試合。
ウイニングボールを渡された塚原、ヒーローインタビューでは「父の日が近いので、父親にプレゼントしようと思います」という、若手らしい殊勝な答え。次の目標は完投、完封ということであるが、そう遠くない時期にその目標は達成できるのではないかと思う。むしろ、今や神通力がすっかり薄れた平野、岸田にそれでも頼らざるを得ない状況のほうが心配である。
昨年は西のプロ初勝利という試合を観る機会があったのだが、西と合わせてこの塚原もいずれはオリックスの投手陣の中心になることが求められるだろう。そんな若手投手の記念すべき試合に出会えることができたのも、私としてはうれしいことである。これからの奮投にも期待したいところである・・・・。