高松出張中は頭の中で「うどん」のことがずっと気になっていたのだが、何しろ連れがあって行動が自由にならない。どういう訳か連れの人々はうどんに関心のない人ばかりのようで、三日間という機会を得ながら、結局ホテルの朝食のビュッフェに、わんこそばのようにして出されたものを食すに終わってしまった。なんとも残念だったのだけど、終いには陳健一の坦々麺を食べて帰る始末で、なんだかなあというオマケつきだった。まあ、辛くて旨くはあったのだけれど…。
ご存知のように香川はうどん県というのを名乗っていて、観光のためだとはいえ、それほど強い執着をうどんに持っているということらしい。長崎だとカステラ県でもおかしいし、ちゃんぽん県でもおかしくないが、やはり行き過ぎという気がする。トルコライス県とかは何となくマニアックだし、しっぽく県というのもやはり局部すぎる。香川が如何に思いきったことをしているのかというのは、考えてみるとそういう比較をすると明らかにも思える。ラーメン屋さんだってそれなりにあったようだし、皆が本当に納得しているものかは何となく疑問には感じるが、うどんブームで調子に乗る前から、やはりそれなりに凄い自負があったことは確かだろう。
そういう訳で僕の心は、自然にうどんに心を奪われていたのだけれど、やはり一緒にいるご年配の方にとっては、うどんなんてどうでもいいことなのかもしれなかった。日に三度飯は食うにせよ、昼は弁当なんかだったし、夜は飲みにいかなくてはならない。〆に再度食事をとろうなんて人は、年をとると居なくなる。最初からハードルが高い願いだったということなのだろう。
今度いつ香川県に行けるものかはよく分からないが、このような結果はむしろ、うどんへの更なる渇望につながることになるような予感がする。実を言うと既に帰ってきてそれなりに時間が経過しているのに、うどんというのが気にかかっているのがその証拠である。幸い最近のブームもあって、讃岐うどん風のものはどこでも食べることが出来るようになっている。そうではあるのだけど、それで妥協してやりすごすのかというハードルも同時にあがっている感じがして、自分自身でもなんだかめんどくさい。
少なくとも心置きなく食うためには、もう少し体重を落としてからにしたいところだ。日本の国なら増税してから絞るということらしいけど、個人でそれをやれば破綻するのは目に見えている。いや、本当は国だって同じことかもしれないですけど。