カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

これぞ過激過剰な娯楽の王道   哀しき獣

2022-04-02 | 映画

哀しき獣/ナ・ホンジン監督

 中国の朝鮮族の住むあるまちで、ギャンブル好きのタクシー運転手の男は借金を抱え、その借金返済のために、また大きな賭けをして負けてしまう。小金ができても、すぐに賭けてすってしまう。そうして積み上がった大量の借金で、どうにもならなくなってしまう。そこでやくざの大将のような男から、韓国にいるある男を殺して親指を切り取って持ってきたら、借金を返しても余るような大金をやる、と言われる。そういう訳で漁船で密入国して、なんとか目的の男は探り出すことができた。同時に別れて逃げた妻が韓国にわたっているらしいということも知っていたので、気になって探しにいく。しかし、妻は何者かに殴られ、そのまま連れ去られた様子で部屋には居なかった。探そうにもどこに行ったか分かりようがない。帰りの船の予定もあり、殺すべき男のところで張り込んでいると……。
 状況がヤバすぎて、命がいくつあっても足りないような緊張感の連続のアクション劇である。とにかく男は逃走するしかないが、最初は警察に追われ、この殺しに絡んだヤクザにも追われる。さらに物語は複雑に絡んで、殺しを依頼した地元ヤクザにも追われていく。まるでターミネーターに追われているような感じなのだが、逃げながらも戦い怪我を負う。そういうところはランボーみたいな感じでもある。しかしながらこれは韓国映画である。暴力は過激で、たくさんの血が流れ、残忍で無茶苦茶である。人間の憎悪と数奇な運命の混ざったドロドロの世界で、しかし肝心なところはいい加減な人がいて、どんどん誤った方向だけが示されていく。そうしてそれぞれに行き場のないサバイバル・レースに突入していくのである。
 面白いと言えばそうなのだが、ひどく殴ったり嬲ったり刺したりなど激しい暴力が連鎖するので、いささか疲れる。主人公の男はすぐれた身体能力の持ち主であるのと同時に、決してあきらめずに逃げ回る。そんなに頭は良くないのだが、ちょっとしたきっかけで、その隙間を生き延びていく。さらにほかのキャラもたっていて、特に地元ヤクザの男が、後半の主人公に変貌するような活躍をする。いったいこの話はどうなってんだ、という感じである。最後には皮肉な謎解きも暗示されていて、まったく切ない。こうなれば明るい未来はあり得ないというのは分かるのだけれど、さらに追い打ちをかけるような仕打ちである。容赦のかけらもないのである。
 実際にはちょっと考えられないくらいあり得ない展開だけど、仕掛けは実に巧みに上手い。こういう娯楽作というのは、本当に韓国映画は優れている。まあ、観る人は選ぶのだろうけれど……。
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