カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

暴力団は暴力に弱い   孤狼の血LEVEL2

2022-04-22 | 映画

孤狼の血LEVEL2/白石和彌監督

 原作は柚木裕子だが、お話は映画版オリジナルだという。しかしながら前作の設定の続編になっていて、主人公は前作で助演をしていた松坂桃李である。暴力団の抗争が激しい架空の地(恐らく広島あたりだろうが)に、非常に狂暴だった男が刑務所から出所する。男は特に世話になったと思っている刑務官の妹を無残にいたぶり殺害する。そうして、一定の協定を守って平和に暮らしていた暴力団のパワーバランスを、強烈な暴力でもって崩していくのだった。そこにこれまでのやり方が通用しないと考えた丸暴刑事が、自らヤクザ的なやり方で組織と対峙していく。しかしそれは警察内部との対立も意味し、孤独と危険を併せ持つ無謀な戦い方だった。そこに引退間近の刑事が相棒になってくれるのだったが……。
 とにかく狂暴なヤクザの役を鈴木亮平が怪演していて、それを見るための映画、という感じになっている。ほとんど化け物で手が付けられない。ヤクザの仁義ともほぼ無縁で、単に残酷に暴れることのみを目的に生きているような男なのである。最初に明確な一般人の殺人を犯しており、そもそもその為に警察の捜査本部が組織されているわけだが、警察はあるメンツがあって殺人の犯人にたどり着けない。そうしてヤクザ内部の抗争が、ほとんどこの凶暴な男の暴走のために滅茶苦茶になってしまうのだ。
 ヤクザ同士の戦いにおいて、ほとんどいじめに近い暴力で他の組長がいたぶられたりして、正直言ってヤクザも可哀そうに思えてしまう。金銭的に成功しているヤクザの組が、そのヤクザの格や上下関係と関係なく、ヤクザ的な暴力の前に次々に壊滅させられていく。数的な優位性などもほとんど関係ない。それよりも残酷で狂暴で手が付けられないからこそ、理屈が通らずに屈していくのである。まさに理屈より暴力。それは破滅的だからこそ、一時的には無敵なのだ。その場限りであれば、その場の人間は理性があるので、立ち向かうことができないということだ。なんだか今の社会情勢のようではないか。
 やたらに気持ちは悪いが、凄いものを観てしまった、という印象は残る。しかし続編を作ることができるのだろうか(そういう話があるのかは知らないけど)。
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