容疑者Xの献身/西谷弘監督
推理のトリックのために話が組み立てられるということは当然あって、だから悪いというのではないが、そのために必然的な背景がうまく構築されないということはたびたび起こりうることなのであった。しかしそのトリックが見事なのであれば、そういう背景には多少なりとも目をつぶってみるということは、普通に修正できる了解事項ともいえることなのかもしれない。原作である小説の方も確かに良くできていて、純愛ということを考えると、十分に納得して感心して読んだという経験があった。そういう意味では、やはり相当に原作が良かったということは、まず第一にいえることなのだとは思う。しかし、この映画は、それでも大変に優れた映画だと思えたことも確かだ。小説の中で、もう少し踏み込んで納得できないしこりのようなものが残ったこともないではなかったのだが、映画の展開は、そういう疑問を払拭させるに十分な、細かい演出が光っていたのである。いやむしろ見るものを飽きさせない、新たなサスペンスの要素をふんだんに取り入れることによって、むしろ純愛の静かな深みを増すことに成功させてしまった。原作を読んでいながら、ほとんど筋道を知っていながら、あふれ出てくる涙をこらえることができなかった。ほとんど号泣のような気持ちになって、スクリーンを直視できなくなるのだった。
もうそんなに時間がないのかもしれないが、年末に必ず観ておくべき映画としてあげておかなければ、とても年を越せるものではない。たまたま時間が空いてその空白を埋めるものがこんなに巨大な感動を生むものだとは、まさに映画を見ることの醍醐味だという奇跡的な経験をすることになったのだった。
推理のトリックのために話が組み立てられるということは当然あって、だから悪いというのではないが、そのために必然的な背景がうまく構築されないということはたびたび起こりうることなのであった。しかしそのトリックが見事なのであれば、そういう背景には多少なりとも目をつぶってみるということは、普通に修正できる了解事項ともいえることなのかもしれない。原作である小説の方も確かに良くできていて、純愛ということを考えると、十分に納得して感心して読んだという経験があった。そういう意味では、やはり相当に原作が良かったということは、まず第一にいえることなのだとは思う。しかし、この映画は、それでも大変に優れた映画だと思えたことも確かだ。小説の中で、もう少し踏み込んで納得できないしこりのようなものが残ったこともないではなかったのだが、映画の展開は、そういう疑問を払拭させるに十分な、細かい演出が光っていたのである。いやむしろ見るものを飽きさせない、新たなサスペンスの要素をふんだんに取り入れることによって、むしろ純愛の静かな深みを増すことに成功させてしまった。原作を読んでいながら、ほとんど筋道を知っていながら、あふれ出てくる涙をこらえることができなかった。ほとんど号泣のような気持ちになって、スクリーンを直視できなくなるのだった。
もうそんなに時間がないのかもしれないが、年末に必ず観ておくべき映画としてあげておかなければ、とても年を越せるものではない。たまたま時間が空いてその空白を埋めるものがこんなに巨大な感動を生むものだとは、まさに映画を見ることの醍醐味だという奇跡的な経験をすることになったのだった。