何ものでもない

2010-12-29 | 【断想】ETC
 今年は、人の死に接することが多かった。
 年々、死が身近になっていく。
 エピクロスの主要教説より。岩波文庫、出隆・岩崎允胤訳。
 《2 死はわれわれにとって何ものでもない。なぜなら、分解したものは感覚をもたない、しかるに、感覚をもたないものはわれわれにとって何ものでもないからである。》
 死ねば、われわれの神経系は機能しなくなり、感覚をなくす。と言うことは、苦痛もないということ。死そのものに、思い煩うことはないということ。
 沓掛良彦訳の「ピエリアの薔薇」より、パルラダースの「死の怖れ」。
 同じような考えをもとにした詩である。
 先日は、二行だけ書き写したが、今日は全部。
  死を待つ心こそが大いなる苦患
  死すべき身の人間は
  死によりてこの苦を遁る。
  されば生に訣れ告げたる人を
  悼んで泣くのはやめよ。
  死して後ははや
  何の苦しみもなきが故に。
 もうひとつ、エピクロスの断片より。
 《66 亡くなった友人にたいしては、悲嘆によってではなく、追想によって、共感を寄せようではないか。》