狼とのトラブル回避

2008-01-21 | 【断想】ETC
 柳田国男の「遠野物語」に狼が登場するのは、36話から42話である。
 読んで思うのは、狼は理由もなく人を襲うということはないのではないかということである。狼ばかりではないかとも思われるが。
 狼の鳴き声を真似して、狼の神経を尖らしたり、狼の子を殺したり、人の過剰な警戒心や恐れが、刺激してしまったような時にトラブルが起こっているようである。犬を怖がる人ほど犬に吠えられるというのと同じである。
 以前、ものの本で、獲物をめぐっては、猟師と狼の間には、暗黙のルールがあったと読んだ。狼に追い立てられたであろう獲物を図らずもしとめたときには、猟師たちは、狼の取り分を、そこに残したという。
 「遠野物語」の中にも、狼に殺されたばかりと見られる鹿を見つけたときのお爺さんの判断の話がある。鹿の皮は欲しいが、狼が手にした獲物を横取りしては、狼との間にトラブルが発生すると、あきらめるのである。狼とともに生きるには、こういう知恵が必要なのである。