風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「こどものみらい叢書⑥ ワンダーランドに卒業はない」

2022-11-14 | 読書

作家 中島京子さんによる、
子どもの頃読んだ児童文学の読み直しエッセイ。
ほぼ同世代(失礼💦私の方がはるかに上でした😅)なので
読んだ作品だけではなく、その本の版まで同じだったり。
個人的に書影すらとても懐かしい。
とはいえ遥か昔に読んだものばかりなので
改めて本書で内容をおさらいし、思い出した部分も多い。
そうだった、ハックルベリ・フィンは自由な男の子だった。
「秘密の花園」のメアリは癇癪持ちだった。
「アリス」にはチェシャ猫が出てきた。
ピノッキオはキツネとネコに騙されるんだった。
「二年間の休暇」では凧飛ばしたねぇ。
ラム酒という酒の存在は「宝島」で知ったし
コロボックルに至っては、
当時ウチの親父から「オレも見たことがある」と言われ
その「見た」という場所を探し回って歩いた思い出もある。
ナルニア国やゲド戦記系は読んでいなかったけど
読んだ記憶があるものは再読したくて仕方なくなった。

私は男の子として育った中でそれらの本を読んできたから
それほど違和感なく物語に没頭したけれど
確かに多くは「冒険に出る男の子たち」の物語だ。
特に「あしながおじさん」のジェルーシャや
「ピーターパン」のウェンディ、「二年間の休暇」のケート、
そして(読んだことはないが)「ゲド戦記」のテナーなど、
いかにもステロタイプな女性たちがどうなったのか。
中島さんの感じ方に感心&納得していた。
ランダムに様々な作品について書いてあると思って読み進めたが
取り上げる順番もちゃんと意図されていたことにも驚き。
それは本書を最後まで読むとわかる。
中島さんすごい。

ところで、「前書き」に書いてあったことも印象に残った。
確かに子どもたちは外国作品を基本的に翻訳で読む。
ということは、ストーリー展開はともかくとして
表現や文体などは翻訳者の作品であるわけだ。
私が小学生時代に夢中になり、友達と競って全巻読破した
ポプラ社の「怪盗ルパン」シリーズなどは
間違いなくモーリス・ルブランというよりも
南洋一郎さんの文体に魅せられてのことだった。
大人になってから別な人が訳したルパンシリーズを読んでみて
そのあまりの違いに驚愕したことまで思い出した。
大人向けは全然面白くなかった😅
中島さんは石井桃子さんの訳した本で育ったという。
別な人が訳した本を読んでいたらどんな感想を抱いたんだろう。

「こどものみらい叢書⑥  ワンダーランドに卒業はない」
中島京子:著 世界思想社

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする