風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

東京

2020-03-01 | 風屋日記
会社から出るのは平均してだいたい20時から21時だった。
大きな割合を占める商材の得意先2件は
それぞれの担当である課長チームや係長たちに任せ
私は新しい分野を開拓しようと昼間は外で人と会うことが多く
帰ってからそれぞれのチームの報告を受けて日々業務をまとめる。
月末〜月初は月次の集計をし、会議資料を作る。
何事かなければ通常の仕事はそんな感じで毎日を過ごしていた。

会社がある浜松町から、住んでいる押上に帰るには
地下鉄浅草線に大門駅から乗車する。
文庫本を開くときもあったが、頭が疲れていてぼんやりが多かった。
真っ暗な車窓を眺めて電車に揺られていると
時々ふっとひとりで風に吹かれたくなった。
押上のふたつ手前の浅草でふらっと降りて階段を登る。

隅田公園に至る道すがらで缶ビール1本だけ買って
ぶらぶらと隅田川沿いを歩き、石段に腰掛け
夜の川を眺めながらビールを飲むことがあった。




明るい光を放ちながら屋形船が通っていく。
水面にビルの灯りがにじんで浮かぶ。
対岸には帰るべき駅にあるスカイツリーが見える。
ビールを飲み干しても、しばらくその景色を眺めていた。
今日のこと、明日のこと、これまでの人生、これからの人生。
いろんなことが頭に浮かぶ。
マンションの灯りを眺めながら
そこに住む家族の姿を想像したりしていた。
やがて立ち上がり、改めて帰途につく。
洗濯しなくちゃ。

2014年3月に岩手に帰ってくるまでの4年間。
そんな生活を私は東京で送っていた。
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