風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

江夏豊

2020-03-06 | スポーツ
日本ハム時代の大谷翔平が
1番投手で先発出場し、先頭打者ホームランを放ったという
漫画でもベタすぎてありえないようなことをやったが、
その昔、それ以上に漫画にもないようなことを何度もやった男がいた。





その名は江夏豊。
まだ高卒2年目にシーズン401奪三振の記録を作ったが
そのシーズン内、プロ野球タイ記録となる三振と新記録となる三振を
両方とも当時スーパースターだった王貞治から奪った。
簡単に書くとそれだけの話に思えるが
なんと彼は「新記録を王から奪う」と宣言したにも関わらず、
勘違いしてタイ記録の三振を王から奪ってしまったのだ。
そこからが漫画だ。
「絶対に王からの三振を新記録にする」と
次の王の打席までの8人から三振を取らなかったのだ。
もちろん打たれたわけじゃない。
無失点に抑えつつ王の打席を迎え、宣言通り新記録を達成した。
まだ20歳の若手がそんなことできたことが奇跡。

まだある。
入団4年目(まだ22歳)のオールスターでは
あの江川ですら達成できなかった伝説の9連続奪三振。
実は前年のオールスターで5連続三振を奪っており、
9連続の翌日登板時には最初のバッターを三振に切っているので
実は15連続奪三振なのだ。
この記録はもう誰にも破られることはないだろう。

そして極め付けはその2年後のノーヒットノーランだ。
対中日戦、延長12回まで相手をノーヒットに抑えていたものの
ゲームスコアは0−0のまま。
12回裏に決着つけたのは江夏自身のサヨナラホームランだった。
試合後の談話の「野球はひとりでできるんだな」は
チーム内では顰蹙を買ったらしいが、誰も面と向かって非難できない。
それだけカッコいいセリフだと思う。
実はこの試合、江夏は中1日での登板だった。
そして5日前には広島戦で延長を完封している。
手がつけられないとはこのことだ。

私が物心ついて野球に興味を持ち始めた頃、
日本中の野球ファンにとってスーパースターは王と長嶋だった。
豪速球とカーブだけでその2人からバッタバッタと三振を奪う
ちょいと帽子をハスにかぶったダークヒーロー。
時々人を食ったようなスローボールを投げる投球術も見事だった
その日から江夏ファンのまま50年以上経った。
結果ではなく、投げる姿や姿勢そのものに心躍らせるピッチャーは
江夏以降そういない。
最近では藤川に似たような匂いを感じてかな。
コメント
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