風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「旧暦で日本を楽しむ」

2015-06-09 | 読書
殊更声高に「日本は素晴らしい」「日本人の誇りを」
果ては歴史を直視する人々を「反日」「売国奴」と言い放つ人たちの
いったい何割の人々が古くからの日本文化を知っているのだろう。
自然を愛でつつ季節とともに生き、二十四節気を大切にし、
隣人とのコミュニティの中で謙虚さを失わず
折々の伝統的生活慣習に基づいて暮らす営みこそ
本当の日本文化だとワタシは思うのだ。
茶道も華道も香道も、そして伝統芸能もその一環。

ただし生活慣習も有職故実も
本当なら江戸期までの旧暦に基づいたもの。
これから厳冬期に入る時に「初春」って感慨は無いよねぇ。
梅雨まっただ中は雲がかかって七夕の星なんて見えないよねぇ。
5月は清々しい晴天が続くから五月雨ってイマイチわからないよねぇ。
重陽の節句といっても、まだ残暑が厳しくて
秋の風情なんか感じている余裕無いよねぇ。
それらはすべて旧暦で考えると納得できることばかり。

一番納得できるのは着物やお茶の世界。
5月までは袷、6月と9月は単衣で、7~8月は絽か紗の薄物・・・
と言っても、新暦の6月や9月は暑くて単衣なんて我慢大会。
新茶の口切も、季節の花や道具仕立も旧暦に合わせたものが多い。
それでも暦を大切にするそれらの文化は無理に新暦に合わせる。
おかしいっちゃおかしい話ではある。

普段の生活は新暦でも良いけれど
季節を感じたり、有職故実に従う時は旧暦をもっと意識しようよ
・・・というのが本書。
現代を生きるバリバリのノンフィクションライターながら
出張の際は訪れた地を自然体で感じ楽しみ、
普段の東京での生活では下町の浅草や谷中の文化に浸る。
とても良い時間を過ごしていると羨ましくなる。
実は著者はワタシの高校の先輩。
入れ替わりだったので高校時代に直接の接点は無いが、
20年ほど前に偶然銀座で同席させてもらったことがある。
すらりと背が高く、キレキレの頭脳を持った美人先輩。
実は・・・が続くけれど
彼女のお父様にも高校時代に一方ならぬお世話になっていた。
そんなこともあって、(片思い的に)身近に感じている方。
本書には高校時代を過ごした花巻についても
とても美しい風景として描かれている。
そんな目で、もう一度地元花巻を見つめ直したいと感じた。
もちろん旧暦を意識した生活も。

「旧暦で日本を楽しむ」千葉 望:著 講談社+α文庫
コメント
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