風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

不定期連載 風屋の「正しい岩手弁講座」vol.12

2015-06-18 | 文化
今日は不幸なシチュエーションについて学ぼう。

●かっぱりとる
水たまりなどに足を突っ込み、
靴の中に水が入ってきて足が濡れることを言う。
小学校低学年の子が水たまりを「漕いで」歩き、
かっぱりとってべそをかきながら帰る
というシーンは梅雨の季節の風物詩。
こんなレアケースが単語になってる例は
他の地域にあるのだろうか(笑)
花巻市内だけでも「かっぱとる」「かっぽりする」など
ごく狭い地域内でバリエーションも豊かだ。

●おっける
「転ぶ」の意。
これは雪道だろうが凍った道だろうが
自転車で登校する高校生達にとって冬の風物詩。
過去形は「おっけった」過去完了形は「おっけったった」。
大概「腰ぶつけでいだくて(痛くて)わがねー(ダメだ)」
と体育をサボる理由になる。

●まがす
バケツの水やみそ汁などをぶちまけてしまうこと。
ほとんどの場合「まがす」対象は液体に限定される。
東京の大学に進学した高校の先輩が
大学そばの食堂で外食中にみそ汁をひっくり返してしまい
思わず「ありゃ、まがした」と叫んだ話は有名。
それまでは完璧な標準語を話す都会の大学生だったらしいが。

●ふたづげらいる
これは受動体。自動詞でいうと「ふたづげる」
要はやっつけること、しばくことと言った方が判り易いか。
「そんたなごど(そんなこと)したら、ふたづげらいる(泣)」
と怯えるやつに限って世渡りがうまく
本当に「ふたづげらいだ」話はあまり聞かない。
同様に「ふたづげでやる!!」と息巻くシーンを何度か見たが
本当に「ふたづげ」た話も聞かない。

●くらいる
「怒られる」ことを言い、
大概の場合上の立場の人から叱られるというニュアンスを持つ。
小学校入学から高校を出るまで、当地で12年間育ったが
どの先生からもまんべんなく「くらいだ」経験があるワタシ・・・
学校ばかりじゃなく、畑からリンゴ盗んで「くらいだ」り、
池の鯉にちょっかい出してその家の爺サマに「くらいだ」り。
うーむ、「くらいる」ことばかりするワラシだったな。

●かれる
「食われる」の音便形。
東北地方には人食いワニや虎なんぞ生息していないから
言うことを聞かない子どもに「鬼にかれるぞ」と脅す場合を除き
大概は「蚊にかれる」という時にしか使わない。
ただ、最近は女子が肉食化しているらしいから・・・。

●かまどけぇす
「かまど」は恐らく「竃」のことだが
当地方では分家のことを「かまど」と言う。
屋号を見ても、本家の「善右衛門」の分家が「善右衛門かまど」
これを「返す」という表現をして破産を意味する。
破産=竃を返す んだねぇ。
生活の中心として火や煮炊きがいかに重要だったのかわかる。
破産者はいつまでたっても「かまどけぇし」と
レッテルを張られた陰口を叩かれることがあるけれど
それは古くから代々その地に住んでいる人たちに限られる。

●こどだ
「大変だ」の意。
「じゃじゃ、生ゴミ外サ出したままで、熊でも来たらこどだ」
という使い方を(ごく日常的に)する。
冗談で言う場合を除き、
たいてい本当に深刻な「こと」の場合のみに使うことが多い。
「おらえ(おらの家)爺サマ歳だがら、熱でも出したらこどだ」
みたいな使い方。
聞く側も眉根を寄せて聞くようなシチュエーション。



さて、アベ政権の独裁で勝手な憲法解釈の法案可決したらこどだな。
心ならずも戦禍で命を落とした昔の人たちにくらいでふたづげらいるぞ。
コメント
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