風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

タイムマシン

2012-07-12 | 風屋日記
昔、「時間」は簾のようなものなんじゃないか、
「今」という時間の横には1秒ごとか、1分ごとか
あるいは1日ごとなのかわからないが、
たくさんの過去が並んでいるんじゃないかと
思っていたことがある。
それらが少しずつズレた時間を刻みながら
簾状に1本1本の線になっているんじゃないかと。

そんなことを考えていた中学時代
今も付き合いのある当時の親友にそのことを話してみた。
「そうか。じゃあタイムマシンを作るのは簡単だ。
 何らかの方法で線を飛び越えさえすればいい」
と彼が嬉しそうに言っていたことを覚えている。
そう言われ、自分でも想像してみた。
「今」という時間の線からひょいと隣へ移る。
簡単そうだ。
その時はそんな想像に嬉しくなってしまった。
なんだ、過去へ戻りたい時は隣へ移ればいい。

今はもちろんそんなことは考えないが、
それでも時間というものの不思議さは変わらない。
もう、間もなく52歳?
嘘みたいだ。
なんかの番組のドッキリなんじゃないの?
しかも過去へはもう戻れないなんて。
そんなに遠い未来ではない
自分の人生の終わりに着実に流れてるなんて。

だって過去はすぐ隣にあるみたいに感じる。
ひょいと横を見れば
息子たちとわいわいキャッチボールする自分がいる。
生まれたばかりの息子の柔らかい頬を
笑顔でつつく自分がいる。
ユーミンの歌が流れる高円寺の古い6帖間のアパートで
ゆっくりコーヒーミルを回す自分がいる。
花巻の自宅の自室で
ラジカセのエラ・フィッツジェラルドの声を聴きながら
カミュの文庫本を読んでる自分がいる。
中学校の校庭で汗だくでノックを受ける自分も、
ランニングシャツでカブトムシを探しながら
近所の林の中に入っていく自分もいる。

タイムマシンはどうやら自分の頭の中にあるらしい。
時々、ぼんやりとタバコをくゆらしている時や
東京のひとりの部屋で音楽を聴きながら
缶ビールのプルリングを引いている時など
タイムマシンに乗ってみる。
その瞬間もすぐに過去になってしまうんだけれど。
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