風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「コンビニ・ララバイ」

2012-07-05 | 読書
北上次郎さんが解説に
「重松清と浅田次郎を足したような小説」と書いていたが
この表現は言い得て妙。
生きるのに不器用な登場人物たちが
もがきながら主人公の助けを借りながら
心に灯を点していく。
でき過ぎの感もあるし、人間そこまで単純かとも思うが
でも本当に生きるのがうまい人間はどれだけいる?
そんな不器用な我々だって
多少ご都合主義のファンタジー読んだっていいじゃないか。

それにこの作者はそれだけの人ではない。
この作品は確かに直球で重松+浅田だけれど、
例えば「アンクルトムズ・ケビンの幽霊」は
差別の問題を内包する胸が詰まる物語。
「でいごの花の下に」は男女の深い愛情の物語。
常に暖かい視線ながら静かに市井の人々を描く。
その筆は軽くも重くも自由自在。
ちょっと安定感に欠けるきらいはあるものの
その拙さに見えるところがまた魅力だ。

こんな物語のような人生を歩きたいな。

「コンビニ・ララバイ」池永陽:著 集英社文庫
コメント
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