風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「欲情」

2011-12-09 | 読書
タイトルや
帯のコピーに惹かれて読みはじめた人(特に男性)は
恐らく早々に失望するに違いない。
この作品がいう欲情=自由への渇望なのだから。
社会のしがらみやルールや役割から脱して
個人として自由を求める感情を「欲情」と表現している。
しかし人間はひとつの枠組みを脱しても
また他の枠組みに取り込まれるだけのことだ。
本当の自由は生の向こう側にある。
死こそ本当の自由なのかも知れない。

でも、この作品の登場人物たちに言いたい。
ストイックに、慎ましく生きるのもいいものだよと。
外側が抑制される分、
内側の精神はスピリチュアルに躍動を始める。
信夫が出会った高知の農夫たちのように。

「欲情」坂東眞砂子 著 講談社文庫
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