風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「女神記」

2011-12-28 | 読書
神話の世界。
イザナギとイザナミが中心だが
そこに土俗的慣習が生きる南の島の女たちの物語が交わる。
神話の世界は大学で専攻の国文学と神楽で身近だが
神話は神話としてしか見ていなかったから
それが古い慣習を持つ現実世界とリンクすることにより
よりリアルな形として目の前に現れる。

伝統的な土俗慣習や
社会(大きくても小さくても)の中で
自分の立つべきところを何とか得ようとする男たちに
女たちは翻弄され静かな怒りを心に秘める。
そんな女たちの情念の前に
男たちの何と情けないことよ。

ところでこの伝奇小説、
どちらが先に書かれたかはわからないが
「東京島」と底の方でつながっている気がするのだ。
そちらの方は最初から最後まで現代劇であり
そのあまりのリアルさに少々引いてしまったが、
「女神記」の世界には惹き付けられる。
日本人のDNAか。
それとも文化人類学的興味からなのか。

「女神記」桐野夏生 著 角川文庫
コメント
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