吉澤兄一のブログ

お江戸のど真ん中、平河町から、市井のトピックスを日記風につづりたいと思います。

赤染晶子さんの『乙女の密告』(文芸春秋)の痛快

2010年08月15日 | Weblog
 この14・15日の月遅れお盆の墓参りは、電車だ。スーパーひたちの往復は、文芸春秋9月特別号が友だ。この度(143回)の芥川賞受賞作『乙女の密告』が、一人旅を痛快にした。手前勝手な受けとめだが、芥川賞らしい”短編”だ。文章も、構成も素晴らしい。読みやすい。

 ずっと昔読んだような、そんな『アンネの日記』の復習にもなった。文字通りの短編だが、次を急がせる展開で痛快だ。自分が想像したこともない外国語大学の女子語学教室の雰囲気を教えてもらった。作者の赤染晶子さんの思考やアタマの中が伺えて、興味心を高めてくれた。

 何しろはじめの10行あたりの文章や流れが小気味いい。言葉や文章のセンスというか、味がいい。展開というか、登場させる人物のキャラと順序がいい。推理心を同調させる構成が素人の自分にフィットする。久しぶりに爽快な芥川賞文学に遭遇した。一気に読み終わってしまったが、一人夏のショートトリップを爽快にしてくれた。

 アンネ・フランクを密告したものが「私みか子」だというエンディングが痛快だ。バーチャル・リアリティ時代にぴったりの短編だ。口コミや風評・風聞の行き交う世の中ではあるが、真実だけが世の中を進めているのではないということを教えている。真実の禁断の果実は、乙女だけのものではなさそうだ。


 

コメント
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