生産でも競馬でも、その世界に科学を持ち込んで普及することに大きな役割を果たしているのは獣医師だということを述べてきた。
しかし、日本では獣医科大学でも馬については教えなくなっている。(まったく教えていない大学もあるんじゃないだろうか?)
馬は人を乗せるという他の動物にはない強烈なヒューマンアニマルボンドを持った動物だし、
かつて臨床獣医学とは馬獣医学だったという歴史もあるし、
大動物の扱いを教えるのに適した動物だし、
競馬は世間の注目と莫大な金額を集める社会事象でもある。
馬獣医学を捨ててしまって良いとは思えない。
全国の獣医科大学で馬獣医学に時間や経費を割くことができないのはわかるが、馬について学びたい者が勉強できる大学がどこかにあってもらいたいと思う。
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日本の現状を見るとこれから先も大学へ馬が集まるようにはならないだろう。
それなら馬の臨床を学びたい人が患畜が集まるところで研修できる研修医制度インターンシップを作ることはできないだろうか。
いくつかの大学の家畜病院では有給研修医をおき始めている。しかし、馬については大学では実現不可能だ。
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また欧米では20年以上前から専門医制度が分野別にできている。インターンシップを終えた者が、さらに専門知識・技術を身につけるために数年間、指導を受けながら臨床を行い、学会発表や論文発表もして、認定試験を受けて専門医になる。
今の欧米には専門医ではなくてもその分野で長い経験を持ってレベルの高い仕事をしている獣医師がいるが、これからは専門医になっていなければその分野で仕事をはじめることさえ難しいだろう。
日本でも小動物分野では、各学会が中心になって専門医の認定を始めている。しかし、馬については学会さえないのが日本の現状だ。
この先、欧米から見たとき、専門医のいない日本の馬獣医師はレベルが低いと判断されてしまうだろう。
海外の馬主の馬、海外からの有名馬が故障したり病気になったとき、それで大丈夫だろうか?
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また馬獣医師の学会・協会がないので、誰が馬の獣医師かを示すものも何もない。馬に触ったことがほとんどなく、馬についての教育もほとんど受けていない獣医師がほとんどなのに、その中で馬の獣医師であることを示すものがない。
アメリカ馬臨床獣医師会 AAEP は、AAEP のメンバーであることを示すシールを毎年くれる。
人の専門医を認定している学会では、全国の専門医の名簿をインターネットで公開している。
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馬臨床獣医学の教育について大学教育・インターンシップ・専門医教育などがそのような現状なので、日本では雇用者は、教育を受けた人、認定を受けた人を連れてくれば良いというわけにはいかない。
自分達の職場の中で人を育てていく職場内教育の努力を各職場でしなければならないだろう。
日本の馬の世界はあまりに狭く、日本は終身雇用という社会背景もあるので、馬獣医師は転職しながらキャリアアップしていけるようにはならないだろう。
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そして、職場の枠をこえた研修も必要だろう。学会や獣医師会の集まりに出ても馬について学べる機会はごく限られている。
馬の獣医師が集まる学会や集会が必要だ。
それは、日本馬臨床獣医師学会・協会 Japanese Association of Equine Practitioners JAEP であってもらいたいと思うのだが、いかがでしょうか?
ながながとウマ科学会シンポジウムでの講演内容を記述してきたが、今回で終了。お粗末さまでした。
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Tieback & ventriculocordectomy 週間。
先週から数えて4頭目。
右はTiebackに使っているsecuros tieback kit 。
すっかり使い方に慣れたし、内視鏡で見ながら引っ張り具合を調節できるし、引っ張ろうと思えばいくらでも引っ張れるし、結び目がゆるむことはないようだし、今のところ良い方法だと思っている。