分娩のときに、直腸から子馬の鼻面が出てきたらしい。ただ、子宮をかぶっていたという。
子宮に孔はあかずに、直腸を破ってしまうということがある。
直腸が破れて糞が腹腔へこぼれると、ひどい腹膜炎を起こす。
しかし直腸の縫合は困難で、今まではそのまま諦めるしかなかった。
しかし、2005年のAAEPでかのHagyard-Davidson-McGeeが発表しているのだが、分娩時の直腸穿孔は縫合できるというのだ。
尾椎硬膜外麻酔をして、肛門括約筋を12時方向で切開する。
2,4,6,10時方向に糸をかけて牽引する。
しかし、孔に指を入れて直腸を思いっきり引っ張ると・・・・・
分娩後だけは産道周辺が緩んでいるらしく、直腸を反転させられる。というのだ。
やってみたが、そう簡単ではない。
H-D-Mの報告では自動吻合器を使っている。手で縫うのは楽ではないからだろう。
今回は指で引っ張っておいてもらって、何とか手で縫った。
術後、やはり腹膜炎を起こしてドレインを入れたが、腹膜炎はそれほど重症化しなかった。直腸が破れてから縫合するまでの間に糞が腹腔内にこぼれずに済んだのだろう。
分娩時に直腸が破れたら、早く連れて来れば助けられるかもしれません・・・・・・
また、夜中の急患が増えるけど・・・・・・
やってみての技術的側面。
直腸壁は普通の腸管より丈夫なようだ。かなり引っ張っても裂けずに済んだ。
直腸の孔をとめておいたり引っ張るのにアリス鉗子が役立つらしい。何本も用意しておくと手で縫うにもやりやすいだろう。
hig先生は分娩時の子宮損傷についてよく書かれています。また、今日は直腸損傷についても書かれていますが、馬のお産は事故が多いのでしょうか。
子馬のヒズメで破るのでしょうか。お産のとき紐をかけて強引に引っ張る様子をみたこともあるのですが。。。 馬の自然分娩というのは少ないのでしょうか。
サラブレッドの種母馬は経済動物で効率的に1年に1回お産をさせるようですね。
分娩後10日で種付けすることを知り、びっくりしました。頻回のお産が原因ではありませんか。ヒトの産科も医師や助産師の不足が問題になっていますが、馬の世界の医師不足はどうでしょうか。
生産地での馬の死亡原因は、骨折、腸捻転、分娩事故がベストスリーです。子馬の事故もかなりありますが、これは数字になっていません。
馬は肢、頚、鼻っ面が長いので難産になりやすいようです。自然分娩が少ないということはありません。できるだけ人が介助しない方が良いとも思っています。
自然界だと、子馬を育てる年は妊娠せず、次の年に妊娠して、子馬を生むのは1年おきのようです。毎年産まそうとするのは家畜ゆえですが、10年続けて産んでいる馬もいます。連産の害があるのか、あるいは隔年生産にメリットがあるのか、誰かに調べて欲しいと思います。
人医療も、医師や助産師不足の背景には医療費の抑制が必要とする考えや健康保険制度の破綻があります。馬医師もこれから育成していけるかどうかは、社会問題としての「経済」にかかっていると思います。
昔から言われていると思いますが、妊娠時の運動と栄養のバランスに関する認識が日高中徹底していれば、センターももう少し楽になるのでは?難産の繁殖がどういう管理されていたのかを追跡調査するのも大いに価値があるのでは?
とねっ仔が他の母親に蹴られたり、牧柵に激突したり、無口がひっかかって窒息したりして死ぬ事は珍しいことではありませんよね。
問題ないものでしょうか?
妊娠中の運動は難産予防のためには大事だろうと思います。一般的なお産の軽い、重いにも影響するでしょう。私のところへ連れてこられる難産は、失位がほとんどです。何千頭かのうちの数十頭ですから、特別な例と考えても良いのかも知れません。
ウオーキングマシンが普及して難産が減ったという人がいますが、どうなんでしょうね?
共済保険がカバーしていない子馬の事故は、どのくらいの率で、どのような疾患、事故が多いのか把握されていません。かなりの率だと思うのですが。
それは切る前に気にしました。しかし、直腸を縫えなければ腹膜炎で間違いなく死亡します。また、第三度会陰裂傷などで括約筋を完全に修復できない馬は、いつも糞で陰部を汚したりしますが、繁殖雌馬としての問題は無いようです。
今回のように括約筋を切開してもすぐ縫合すると問題なく癒合するようです。しばらく食欲もなく、便もあまり出ないようです。直腸の痛みと腹膜炎のせいかと思いますが、直腸壁の癒合、括約筋の癒合のためには良いのかもしれません。