馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

めたぼ 肥満

2008-01-24 | 馬内科学

Photo 最近、よく言われることだが、メタボリックシンドローム。

要注意の基準として、男性ではウェストが85cm以上であることがあげられている。

それが厳しすぎるとか、いやそうじゃないとか議論もある。しかし・・・

ウェストサイズは内臓脂肪と相関があることがわかっている。

内臓脂肪が多いことはそのこと自体が成人病、生活習慣病、血管病、糖尿病などの要因になることもわかってきた。

それでウェスト85cmという、かなりの人がひっかかってしまう基準が提唱されている。

図、ほかのネタ元は以下。

http://www.uralynet.com/ms/msgl.htm

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 さて、話題にしたいのは私の腹回りではなくて(笑)・・・・・

私たちは年に何十頭かの馬の開腹手術をし、百頭以上の馬の解剖をする。

そして、腹腔の脂肪の量に驚くことが少なくない。

10年前、20年前にくらべると明らかに生産地の馬のボディーコンディションBCSは高くなっている。

それが「改善」「向上」なのかどうか、考えてみる必要があると思う。

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 私は生産地にいても馬の繁殖管理にはほとんどタッチしていないし、栄養管理や飼養管理についても素人だ。

ただ、素人なりに「過剰な体脂肪の蓄積が望ましいわけがない」と思っている。

馬にどういう栄養をどれだけ与えることが望ましいか?などというのは、いくら研究して議論しても、結果が出るものではないだろう。

それは、人のメタボリックシンドロームの基準について、専門家でも意見が分かれるのと同じだろう。

メタボリックシンドロームを専門にしているお医者さんでも、自身がウェスト85cm以上の「ちょいメタ」であり、

「それは適度な体脂肪の蓄積で、病気になりにくい、そして病気になっても耐えられる体なのだ」と考えている先生もいるようだ。

まして、繁殖雌馬だと、毎年受胎させる。大きくてよい子どもを産ませる。ということが優先されるし、

高血圧や糖尿病や心臓病が問題になっているわけではないので、

「太っていて何が悪い?」という人もいるだろう。

しかし、やっぱり、太りすぎは良くないと思うのだ。

(つづく)

と言いながら昨夜は宴会だった・・・・・・・・


6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私は、例えば繁殖牝馬であれば、最適なBCSの幅(タ... (shigie)
2008-01-24 08:15:56
私は、例えば繁殖牝馬であれば、最適なBCSの幅(ターゲット)というのは意外と狭いものだと感じています。受胎という命題を優先させると太めの方が良いし、太めの繁殖牝馬が産む仔馬が潜在的に持つ屈腱の拘縮、過大児に伴うさまざまな問題などを考慮すると小さめの仔馬を産むように少しやせ気味の繁殖牝馬が望ましい(痩せると健康的で小さな仔馬を産むとは限りませんが・・・)、と考えるとターゲットとするBCSは狭いのです。しかも冬期間の気象条件、青草や運動量などに影響を受けますので、毎年これでいいと思ったことはありません。
育成馬も同様で、常にセリを意識した馬体づくりをこの冬期間から始めるわけですが、太くてもいけないし痩せてもいけないがどちらかというとやや太めに作ります。
アメリカ人の栄養学者は、北海道の寒さを乗り切るためにはケンタッキーの馬より少し脂肪を付けた方がよいと言います。そのわりにトップライン(首~背中~臀部にかけて)の筋肉がつかないのが日本の馬に多いように感じます。
どこまでが適正か、どこからが過剰か、常に試行錯誤です。
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>shigieさん (hig)
2008-01-24 19:40:23
>shigieさん
 目的によって理想は違うが、妥協はできない。という感じでしょうか。しかし、馬は個体差もありますし、1頭1頭飼養管理していますから、ある程度はばをもたせていいのではないでしょうか。

 育成馬にしてもセリで売れる馬をめざさなければ。というのはわかりますが、本当は競走へ向う理想と、売れるコンディションは一致していなければいけないはずです。吉田直哉さんが言っていたヨーロッパのバイヤーのようにセリ向けの仕上げを嫌う。というのに私の考えは近いのかもしれません。

 先日、オーストラリアKERのDr.と話しました。繁殖雌馬、種雄馬にとって、BCSはどれくらいが理想か聞きました。5-6という答えで安心しました。種雄馬は大きく強そうに見えなければいけないから・・・・と言っていました。本来は、種付けをこなせて長生きできるコンディションが理想なはずです。蹄葉炎で駄目にするのは「失敗」だと思います。
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その5から6の範囲でさえ、個体差で問題を生じる... (shigie)
2008-01-25 08:25:42
その5から6の範囲でさえ、個体差で問題を生じるので、この馬は5.5、この馬は6がいい、という個体管理が必要です。人によってスコアに幅があるのですが、私は5は低すぎると思います。5.5から6の範囲で、微調整を行っているわけですが、常に意識的にみておかないとその幅がぶれすぎてしまうもので、そこに私のような仕事が必要になってくるのです(これは宣伝)。
最近のセリを見ていると、太っている=良い馬という評価ではなくなってきているようです。しっかりとした運動量によって馬が作られているのが分かると思います。それでも、私は放牧による運動強度が重要だという考えですが・・・。
冬期間から夏以降のセリに向けてコンディションを整えるのは、冬期間にBCSが下がって成長が遅くなった馬は春に急成長をしそれがDOD発症の要因になるからで、それを抑えるためには今から準備が必要というわけです。また、それをうまく無理なく調整するためには離乳をスムーズにする必要があるのです。
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>shigieさん (hig)
2008-01-25 20:34:42
>shigieさん
 う~ん、まあ私は専門家ではないので、「めたぼ」については極端な太りすぎは良くない。というところに留めさせてください。しかし、動物はすべからく、体重が増えつつある時の方がコンディションが良い。というのもだいじなところですよね。

 DODについては、私は年に100頭近いOCDの馬のxrayを診ますし、50頭ほどの頚椎症の腰痿馬を診ますし、骨端症も、骨嚢包も、etc.も診ますが、今のところ、「あなたの餌のやり方が悪いからこうなった」とまで言う確信は持てません。

 運動が大事(量ですか?強度ですか?)という点は、繁殖雌馬にも、種雄馬にも、育成馬にも、人間についても!異論ありません。

 
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「人間についても・・・」というところが耳の痛い... (shigie)
2008-01-26 12:36:47
「人間についても・・・」というところが耳の痛いところです。
DODについては、あくまで「要因となる」という程度しか言えませんが、急成長によって突球になったりするのは、遺伝が背景にあったとしても、餌のやり方または餌の成分バランスで何とかならんのか?と考えています。
雪がようやく積もったので、早起きをしてアニマルトラッキングをしてきました。早朝の運動は気持ちいいですね。
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>shigieさん (hig)
2008-01-26 15:36:10
>shigieさん
 人も馬も適度の運動と栄養、その結果としての適切なボディコンディションが望ましい。適度・適正は目的によって異なる。というところでしょうか。

 要因であるのは間違いないのでしょうから、少しでも発症を減らさなければいけませんね。H先生の指導に期待しています。

 私にとっても適度な運動は、ジョギングよりウオーキングかなと思い始めました(笑)。
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