馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

分娩時の小結腸の損傷

2009-03-31 | 急性腹症

繁殖雌馬は分娩時に小結腸を傷めてしまうことがある。

破裂してしまうとたちまち腹膜炎でひどいことになるし、

腸間膜が裂けて血行が途絶えると、排便が困難になったり、徐々に壊死が進行して、分娩数日後から腹膜炎症状が起こる。

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Dsc_0547_3 この繁殖雌馬も分娩後、疝痛症状を示した。

直腸検査で小結腸が膨満しているのがわかった。

超音波画像診断でも、血腫らしい塊が右膁部の尾側で見えた。

開腹手術すると小結腸の腸間膜に大きな血腫ができて、それが小結腸を閉塞させていた。

小結腸の血行は保たれてはいたが、血腫を完全に取り除くためには腸間膜ごと切除しなければいけないので、そこから血液をもらっている小結腸も切除し、吻合した。

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小結腸にはボールのような糞塊が数珠のように入っているので、胎仔が産道に向う時に一緒に骨盤腔へ引きずり込まれたり、胎仔に強く腸間膜を蹴られて損傷を受けるのだと考えている。

人のお母さんは分娩前に浣腸して直腸を空にしておくようだ。

馬も分娩が近づくと食べなくなるし、排便して小結腸や直腸を空にしようとするように思える。

それは自然の摂理というものかもしれない。

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小結腸が閉塞して膨満していても直腸検査では小腸と間違い易いが、腸紐があるので小腸ではないことがわかる。

分娩後、小結腸が膨満していたら、たいていは小結腸の損傷による小結腸の壊死だ。

助けるには開腹手術しかないが、開腹手術しても術創から出せない直腸に近い部分が傷んでいたら処置できない。

その場合は直腸損傷と同様に、人工肛門を左膁部に造るしか助ける方法はなくなる。

「そこまでしなくて良いわ」と言われてしまうことが多いのだが、

直腸がなくて、直腸検査できなくても、妊娠させることは充分できるだろう。

妊娠鑑定も、発情周期の把握も、今は血液のホルモン値でできる。

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Dsc_0165  今日は競走馬の腕節の関節鏡手術。Dsc_0166_2

分娩後の繁殖雌馬の腹膜炎。

子宮穿孔だった。

昨年Tiebackした競走馬の喉内視鏡検査。

喉頭の状態良好!

今日で平成20年度も終わり。う~ん・・・・・


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