馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

第一指骨(趾骨)粉砕骨折

2006-04-22 | 整形外科

第一指骨(趾骨)が粉砕骨折してしまうと、正しい応急処置をし、スクリューやプレートで手術し、術後も正しくキャストを巻いても、骨は体重を支える強度がないので崩れてしまうことが多い。

痛みも強いので、対側肢が蹄葉炎になりやすい。

Dscn6372このひどい粉砕骨折は繁殖雌馬の趾骨、すなわち後肢だった。

この馬はキャスト固定で、蹄葉炎にもならず生き永らえた。Dscn6371

競走馬時代にも骨折したことがある馬で、痛みに耐える術を知っていたのかもしれない。とは、担当していた獣医さんの弁。

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 第一指骨(趾骨)が内固定の対象になるかどうかは、中手(足)骨と第二指(趾)骨をつなぐ骨がのこっているかどうかが基準になる。トの字型の骨折線はなんとかなる。人字型はだめ。

                  ではどうするか?

 Nunamaker3Nunamaker_2 左はNunamaker先生考案のウォーキングキャスト。右のように中手骨に装着すると馬は第一指骨に体重をかけずに、折れた肢で立つことができる。

これは改良に改良を重ねて作られている。

ピンは何本が良いか。ピンの太さはどのくらいが良いか。

フレームはどれだけの強さが必要か。

失敗から学んでこうなったようだ。

USAでは市販されているようだが、どこで買えるかわからない。値段もそこそこするだろう。

                       -Nbc_1

 このような馬を麻酔から立たせるときは本当に危ない。Nunamaker先生がいるペンシルバニア大学ニューボルトンセンターには骨折馬を安全に覚醒させるためのプールがある。

手術が終わったら馬の体がすっぽりはいるゴムボートに馬を入れて、プールに浮かべておく。

馬が意識がはっきりしてから徐々にプールの水を抜く。

USAでは馬の麻酔覚醒用のプールを市販している業者もある。

USAの住宅地を飛行機から見ると、庭にプールのある家が目に付く。豊かな国の発想なんだろう。

診療所にも家にもプールを買えない私達はどうするか? 考えている方法をそのうち紹介する。

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P4210055 Nunamaker先生のウオーキングキャストの入手方法や値段がわからないので、鉄工所で作ってもらった。

こういうものは用意しておかないとやってみることもできない。

第一指骨(趾骨)粉砕骨折などの馬をこれで助けられる。かどうか・・・・・・

ひどい蹄葉炎にも使えるかも・・・・・・・


4 コメント

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現在良いslingを探しているのですが先生はどこの製... (tomo)
2006-04-22 19:37:59
現在良いslingを探しているのですが先生はどこの製品をお使いですか?ちなみに目を付けているのはHendersonのLAL slingですが…
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>こういうものは用意しておかないとやってみる... (豆作)
2006-04-22 21:22:21
>こういうものは用意しておかないとやってみることもできない。
hig先生の何気ない一言に、大変な重みと、深い情熱を感じます。
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こんな骨折のレントゲン見ますと思い出す馬がいま... (ユンボ)
2006-04-23 00:05:14
こんな骨折のレントゲン見ますと思い出す馬がいます。スタインマンピンの太さが無ければ、ステンでも鉄筋でも打ち込んで看たくなる(この変換が妥当?)馬です。9piecesの骨折でした。切胎もpieceって表現しますね。先生に期待するのは断脚、義足までのレベルでした。adovanced surgeryという本のイラストでしたが鮮明に憶えています。かと思うと同じレベルの骨折でキャストすら無しで競馬場から送らてきた馬は3ヶ月位寝っぱなしでしたが今年で6頭の子馬を産みました。馬が自分で寝るか、寝ないか結果が違うような気がします。laminitisのshoeing、生産地でも進歩してますね。
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>豆作先生 (hig)
2006-04-23 06:43:54
>豆作先生
 大いなる愛と言って欲しかったナ。嘘、ウソ。
>ユンボさん
 忘れてませんよ。ああいう馬を助けるにはと考え続けています。
 寝っぱなしでも、立てないのではなく立たないのだと思えば、生き延びる馬は結構いるのかもしれませんね。
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